アキナの投薬、四苦八苦の話①

皆様から頂いたご寄付をもとに、ただいまチンパンジー４にんの投薬が進行中です。チンパンジー・アキナの投薬の進捗状況を、苦労話とともにお届けします。

まず、全般的に、チンパンジーに薬を飲ませるのは、簡単なことではありません。
もともとは森で様々な植物や動物を食べて暮らす生き物です。うっかり有毒植物を食べてしまえば、命を失う危険さえあります。生き残るためには、得体の知れないものは口に入れない、いつもと違う味のするものは飲み込まない、というのが一番です。

チンパンジーに薬をそのまま与えても、飲んではくれません。「苦い薬を我慢して飲めば病気が治る！」と伝えてチンパンジーに理解してもらいたいところですが、伝えるすべがありません。薬はチンパンジーにとっては、ひょっとしたら毒かもしれない得体の知れないもの、です。そこで、薬を砕いて粉にして、普段の食べ物混ぜて与えます。ところが、味や香り、見た目、食感がいつもと違えば、すぐにバレて、飲んではくれません。

そんなチンパンジーの中でも、アキナは特に用心深い性格です。彼女に薬を飲ませるのは、これまでもずっと大変でした。

肝炎治療薬は、少し苦い味がします。その苦い肝炎治療薬をどうやってアキナに飲ませるか、悩ましい難題でした。治療を完了させるには、８週間もの間、一日も休まず毎日投薬を続けなければなりません。

実は、アキナへの投薬は、2023年1月末に一度始めようとしていました。アキナが大好きなイモ団子（サツマイモを蒸して団子にしたもの）に肝炎治療薬を混ぜて与えました。ところがアキナは、ほんの少し味見しただけで、薬入りのイモ団子を床に放置しました。薬が入っているのがバレたようです。

床に放置されたイモ団子をそのままにしては、もったいないです。すぐさま飼育員が回収しました。幸いにも、まだ食べられるきれいな状態のままでした。そこには、1日分の肝炎治療薬がほぼ完全に入っています。お金にして5万円ちょっと（1日分の薬代）の値打ちがあります。捨てるわけにはいきません。そこで、同じく肝炎治療が必要な別のチンパンジーのショウボウに食べてもらうことにしました。そこから毎日、ショウボウが肝炎治療薬入りのイモ団子を食べることになりました。アキナが薬入りイモ団子を食べなかったことから、治療対象がアキナから急遽ショウボウに替わった、ということになります。ショウボウが、熊本サンクチュアリで最初に肝炎治療に成功したチンパンジーなのですが、実はそんな事情がありました。

ショウボウの治療の成功の後、7月末に、４にん分の治療薬の購入をして、４にんの治療を始めることにしました。アキナもその対象のひとりです。４にんのなかでは、アキナを最初に投薬対象にしました。アキナをトップバッターにしておけば、もしもアキナが薬を飲まなくても、ほかの３にんの誰かに治療対象個体を切り替えることができます。アキナは、イモ団子に薬を混ぜても食べてくれないことは分かっていたので、ジュースに混ぜる方式を試してみることにしました。

ブドウジュースで試したところ、幸いにも、薬の入ったブドウジュースを飲んでくれました。ただ、飼育係の態度や表情の変化だけでも、何か怪しいと感づいてしまって、薬入りのジュースを飲んでくれない可能性もあります。そこで、熟練したベテランの職員だけがアキナに薬を飲ませることにしました。

これから８週間、毎日欠かさず飲んでもらう必要があります。はたして、アキナはずっと毎日飲んでくれるでしょうか？
続きはパート２でご紹介します。

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