【メッセージリレーNO.5】映像写真家：小川 浩司

 

 

私は、彼とのお付き合いは長くは無い。奥さまの友子さんと北海道で出逢い、後に表参道での加藤弘光さんの個展が開催するとの葉書が届き、足を運んだ。

 

日本画家、と聞いていた。作品も写真で拝見した。私の中での「加藤弘光」のイメージは膨らみ、きっと無口な日本男児だろうな...鋭い眼で人を見、和服を着ていて長髪で髭を生やしているんだろう。それでいて、熱い人なんだろうな...

 

だが、初見でそんな妄想は吹っ飛んで行った。失礼だが初めは受付の人かと勘違いした。あれ？イメージと違うな...私の想像とは全然違ったが、気さくで優しく、ギャグを飛ばす面白い人。お話をしてると、すぐに溶け込み仲良くさせて頂いた。

 

私は仕事で映像や写真を取り扱っている、芸術を生業としている本物の人から色々聞き学びたいと思った。そして彼にいくつも問いかけた。創造の源泉や、作品の哲学など。

 

すると今まで楽しく愉快なおじさんの目に炎が宿り、情熱的に語り出した。こと芸術の話になると、私が想像したとおりの日本画家「加藤弘光」であった。そこに甘えや妥協など一切無い、鋭い目の男が私に応えてくれていたのだ。

 

そんな事で、私はすっかり彼の事が好きになった。朗らかさと情熱を併せ持つ人。友子さんのフェイスブックから、度々ご活躍を拝見していた。世界に羽ばたき活躍するその姿に刺激を受け、凄いなぁ、頑張ってるなぁ。影響を受けていたし応援もさせて頂いた。
    

ある日突然の訃報には驚いたが、私には彼が居なくなったとは思えない。人の死は肉体が終わった時？違う。記憶から忘れ去られた時だ。彼は我々の心の中に確実に存在し、目を瞑り想えば思い出と共に笑顔の彼が現れる。そして、燃えるような情熱は、語らずとも残っている画そのものに宿っている。

 

具体的な彼のやりたかった事は、ご家族や仲間、応援する周りの人々で叶えて行くだろう。私もその1人になりたい。身体は灰になろうとも魂の炎は決して消えず、聖火の様にリレーされていく。彼の大きな情熱の炎は確かに私たちの心の中へ燃え移り、沸々と存在し燃えているのだ。彼は我々の人生の一部という事が、心の炎を覗くと感じる。

 

空へ旅立った今もなお、残された情熱は輝いているのだ。

 

映像写真家
小川浩司