天井に取り付ける金色の輪のご報告

今回、仏像をおまつりするお堂は、江戸時代に建てられた伝統建築ですが、中の礼拝空間は、既成概念にとらわれない全く新しい価値を提案したいと考え、改修案を成瀬猪熊建築設計事務所さまに依頼いたしました。その結果、ご提案いただいたものがこのようなプランになります。

古代仏教の世界観では、広い海の中心に須弥山という山があり、その上に仏様の世界が広がっています。この世界観を今回のお堂の中にも凝縮し再現するため、床を水面に見立てた黒い反射する素材で一面目地なく覆うとともに、天井には、雲を思わせる金色の装飾を配しました。その空間の中で、仏様が蓮華の花にお座りになり、黄金に優しく輝きます。（文章・画像提供：成瀬猪熊建築設計事務所）

本プランの中で、ひとつのキモとなるのが、天井に取り付けた金色の装飾です。成瀬猪熊建築設計事務所によれば、「雲を思わせる」という表現をされていますが、これまでの打ち合わせで出た解釈および、私の個人的解釈によれば、単に雲だけでなく、水面に映る波紋や、あるいは光芒、仏様が放つ光そのもの、などなど多くの意味合いを重ね合わせて、見る人に無限の解釈と広がりを与えるものになることを期待しております。

そのように重要なパーツなのですが、金属加工の岡山県の会社で製作してもらったものが、香川県の塗装会社の作業場に運ばれてきましたので、視察に行ってまいりました。広い作業場に広げられ、現在は防錆塗装をしている段階です。

これが作業所全景です。非常に広い場所で塗装作業を行っております。

近づくとこのような円弧が組み合わさったパーツに分かれております。

さらにアップにするとこんな形です。断面は正方形で一辺が16㎜です。製作段階でこの細さが非常に難しく精度が出しづらいということで、19㎜を打診されましたが、非常に重要な部分で軽やかさを出すために当初の設計意図通り16㎜でお願いしますということで、頑張って当初の設計通りに制作して頂きました。日本の技術力の底力と申しますか、さまざまなプロの職人さんの技術によってこのプロジェクトは支えられていることを実感致します。ありがとうございます。

この短いパーツは輪っか同士をつなげるジョイントです。

こちらは、天井から輪っかを吊り下げるワイヤーです。これらも塗装します。

さらに連結用のビスもさび止めの塗装を行います。

職人さんたちが、このような感じで一生懸命、丁寧な作業をしてくださっていました。このプロジェクトは、こうしてさまざまな分野のプロの職人さんたちの手仕事によって、現実のものとしてこの世に姿を現すわけです。本件に関わるすべての職人さんたち、そのおひとりおひとりが居なければ本プロジェクトは成立しません。世の中が多くの人によって、支えられ、支えあいながら、成立しているのだなあということを、本プロジェクトを進めていくうえで本当に痛感しております。

これまでにご支援いただいたご支援者の皆さまを筆頭に、大森暁生工房のスタッフの皆さん、成瀬猪熊建築設計事務所の皆さん、今、改修工事を担当して頂いている菅組の皆さん、内装改修前に古建築としてのお堂を修理・健全化していただいた宮大工の小比賀工務店の皆さん、そして今回のようにパーツを制作してくれた会社の皆さん、それを塗装してくださる会社の皆さん、本プロジェクトに関わる全ての皆さまに対しまして、心より御礼申し上げます。まことにありがとうございます。引き続き、完成・公開までお世話になりますが、どうぞよろしくお願い致します。感謝を込めて南無大師遍照金剛　合掌

讃岐国分寺住職　大塚純司九拝