闘病記録【命の境界線を越えて】（追記）

これは、今年5月。
イブラが「進行性脊髄軟化症」を伴う重度椎間板ヘルニアを発症し、
手術を受けた直後の写真です。

■ 突然の異変、そして緊急搬送

5月中旬、突然歩けなくなり、救急へ搬送。

MRI検査の結果、先生からは「椎間板物質が脊髄を強く圧迫し、命に関わる状態です。
進行性脊髄軟化症を併発している可能性があります」と告げられました。その言葉の意味をすぐには理解できませんでしたが、説明を聞くうちに、これはただのヘルニアではないと分かりました。
時間との戦い――一刻を争う状況でした。

■ 命をつなぐための6時間の大手術

その日の夕方、19時過ぎから緊急手術が始まりました。背中を大きく切開し、脊髄の圧迫を解除する大手術。夜中1時前、ようやく先生からの電話。「手術は無事に終わりました。　ただし、これから1週間が本当の勝負です」と伝えられました。

■ 進行性脊髄軟化症とは

この病気は、脊髄の損傷をきっかけに神経が“溶けるように”壊れていく恐ろしい病です。
多くの場合、手術をしても進行を止めることが難しく、数日で前半身や呼吸筋にまで麻痺が及ぶことがあります。もし麻痺が上半身へ進行すれば、呼吸ができなくなり、命を落とす可能性が非常に高くなります。

■ 「命の境界線」を見つめる日々

術後のイブラはICU（集中治療室）へ。興奮状態を抑えるため、面会も限られました。

写真に写っているイブラの背中には、ガーゼの上に“線”が見えます。
それは、主治医の先生が毎日、皮膚をつまんで「神経が生きている部分」と「麻痺が進んでいる部分」の境界を確認していた痕です。この線が少しでも前に進めば――それは麻痺が上半身に広がっている危険なサイン。もし進行が止まらなければ、もう助ける手段はないかもしれないと説明を受けていました。その線が動かないように、私たちはただ祈ることしかできませんでした。
面会できる20分間、イブラの呼吸や体温を確認しながら、「どうか生きて」と願い続けました。

■ 一週間の峠、そして希望の光

手術から1週間。毎日、面会のたびに心臓が締めつけられましたが、
奇跡的に麻痺の進行は止まりました。先生から「このまま上半身への進行がなければ命の危機は越えた」と伝えられ、その瞬間、張りつめていたものが一気に崩れ落ちるように涙が出ました。

イブラは、小さな体で本当に大きな山を乗り越えてくれました。

この闘病記録は、この病気がどれほど危険であるかを知ってもらいたいという願いも込めています。