ものづくりに真摯に向きあう者

外国人技能実習制度の問題点がコンパクトにまとまったコンテンツとして、以下の番組をご紹介しました。

 

テレビ東京「ガイアの夜明け」

”絶望職場”を今こそ変える！（2017年12月12日放送）

http://txbiz.tv-tokyo.co.jp/gaia/vod/post_145701/

（テレビ東京オンデマンドで配信中）

 

この番組で取材されていた縫製工場の実習生の給与は時給４００円。残業代も支給されず、何か月も休みなくミシンを走らせる生活を送っていました。

 

彼女たちはこの工場へ縫製を発注したアパレルブランドへ出向き、メッセージを掲げて抗議を行っていました。

そのメッセージの中に、過酷な環境で苦しみながらも

「新しいデザインの洋服を作ることが嬉しかった」

という主旨のくだりがあり、胸がしめつけられました。こうした視点は、彼女たちが真剣にものづくりに取り組んでいたことの証左です。

 

私自身の経験を少しお伝えします。大学院修了後、かねてより正式に勉強したかった服飾を学ぶため、専門学校へ入学しました。

カリキュラムでは、服飾のあらゆる分野の座学と、実技の訓練が行われます。
その中で、思いもよらない大きな壁にぶつかりました・・・・・「縫製」です。

 

当初、段階を踏んで練習していけば、何ら問題なく技術を習得できると、たかをくくっていました。
ところが、頭の中でどのようにすればよいか理解できていても、実際にミシンと生地を操ることは容易でなく、思い通りの仕上がりにならないのです。
ほんのわずかな粗（あら）でもやり直しを命じられ、やり遂げなければ単位を取得できませんから、それはもう必死の毎日。
プロとアマチュアのレベルに、大きな隔たりがあることを思い知らされました。

 

すっかり暗くなるまで教室で作品と格闘し、とぼとぼ歩いて帰路についた、ある日のことです。
街灯のない暗い路地に入った途端、とめどなく涙が流れ出しました。
周囲から顔が見えないと、無意識のうちに安心したのでしょう、何ひとつまともに縫えない情けなさが溢れてきたのです。

 

卒業間際に在庫廃棄の事実を知ったとき、七転八倒した日々が鮮やかに思い起こされました。
懸命に縫い上げた製品が、誰からも必要とされないまま廃棄されていく現実に焦燥感をおぼえ、いつか何かをしなければと心に誓ったことが、今回のプロジェクト立ち上げの端緒です。

 

ものづくりに必要とされる集中力、困難を乗り越える苦しさ、そして最終的に経験できる喜びというものは、本気で取り組んだものでなければ理解できません。

冒頭の実習生のメッセージは、その真剣さを表すものです。実習制度の悪用は、真摯にものづくりと向き合う人間につけ入る行為であり、きわめて卑劣と言わざるを得ません。