☆コラム①☆戸嶋諄　母

諄が赤ちゃんだったころを思い返すと、とにかく手がかからない、よく眠る子だった。

3歳離れている上の子が赤ちゃん返りで、そちらに気をつかったのを覚えている。

お腹が空いても、激しく泣かずに唇を“チュッチュッ”と鳴らす諄を見て「大人しくて楽だなぁ」と思っていたが……。

生後10ヶ月のころ「としまあつしくーん！」と呼ぶと「はーい！」と手をあげ「じょうずじょうず」と、手をパチパチと叩いていたのに、いつのまにかやらなくなってしまった。

のちに自閉症児は、このように一度手遊びができたとしても、獲得できずにやらなくなってしまうことがあるらしいと知る。

それから2歳、そして3歳になっても言葉が出てこず“上の子を育てた時とは違う”と、徐々に感じ始めた。

幼児教室に出かけ「上の子の時は打てば響く感覚があったが、この子には打っても響いていない。違和感がある」と相談したが「子供はそれぞれ違う。お母さんがもっとお子さんを抱っこして、愛情をかけてあげて」と言われた。

2〜4歳ごろの幼児期に言葉が出ないことを「絵本を読み聞かせないからだ」「愛情不足」と散々言われた。

……言葉は刃だ。

私の地元が離れているのもあって、不安が大きく、そこに諄の発達の心配も重なった。

それでも、諄はくりくりとした目で可愛いらしかった。

今まで諄を育てていて、心が折れたことは何度も何度もあったが、それでもやってこれたのは諄の可愛さが根元にあるからだ。

今の見た目はあまり可愛くないかもしれないが、親バカの私から見たら可愛い。

そして、諄のキャラクターも面白く可愛らしい。基本的に「諄の可愛らしさ」で今までやってこれたのだな、としみじみ感じている。

【コラム②へ続く】