論文紹介　”舌への痛み刺激による嚥下抑制”

当科ではヒトを対象とした研究のみならず，動物を対象とした研究を通じて摂食嚥下機能の基礎的メカニズムの解明に取り組んでいます．その中には，口腔顔面領域の痛みと嚥下機能との関連についての研究があります．その研究成果が，嚥下障害の国際誌であるDysphagiaにて発表されましたので，ご紹介したいと思います．

https://link.springer.com/article/10.1007/s00455-022-10522-5

＜研究概要＞

実験には，麻酔したラットを使用しました．ラットの舌を強いクリップで挟んで痛み刺激（侵害刺激）を与えると，咽頭に水を注入して誘発される嚥下が抑制されることが確認されました．一方，舌を弱いクリップで挟んだ圧刺激（非侵害刺激）では，嚥下は抑制されませんでした．また，舌を強いクリップで挟んで痛み刺激を与えた際には，嚥下中枢領域のひとつである孤束核の神経細胞の一部の活動に変化が見られました．

本研究成果から，舌の痛み刺激が嚥下中枢の神経活動に影響して，嚥下を起こりにくくしている可能性が考えられました．舌を間違って噛んでしまった時などに嚥下が抑制されることは，様々な危険を回避することに貢献するのかもしれません．他にも大学院生を中心に様々な基礎研究を行っており，臨床につながる成果を発信することを目指して日々奮闘しています！