シェーンベルク：弦楽四重奏曲 第2番 ヘ短調 Op.10（ﾌﾟﾛｸﾞﾗﾑﾉｰﾄ）

クラファン、いよいよ残り３日となりました。
ネクストゴール達成まであと一息です。

プロジェクト概要に追記しました様に、このネクストゴールの達成を持って、グラッフェ弦楽四重奏団の招聘費用が完全に賄える様になります。

どうぞ、引き続き、最後までご支援・ご協力お願いいたします。


さぁ！　プログラムノートの最後は、シェーンベルクの弦楽四重奏曲 第2番です。
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シェーンベルク：弦楽四重奏曲 第2番 ヘ短調 Op.10（ソプラノ付き）

この作品（1907–08）は、シェーンベルクが大きな人生の転機にあった時期に生まれました。

この楽曲が、後に彼の妻に捧げられたこともあってか、妻の不倫、とりわけ妻が戻ってきた後に不倫相手が自死するというドラマに焦点が当てられる傾向にありますが、この時期のシェーンベルグは 誰の人生にも訪れる、絶不調の時で、人生の苦悩とドン底が一気に訪れていた時期でした。

家庭の危機、経済的困窮、作曲家としての将来への不安も重なって、現状をいかに理解し乗り越えていくのかが彼にとって大きな人生の課題でした。

調性から無調への過渡期の作品として知られるこの作品、まさにシェーンベルグの『苦悩と解放（離脱・超越）』がこの1曲を通して感じられます。

20世紀の始まりと共に、シェーンベルクだけでなく、芸術全般に同じ様な流れは押し寄せていて、皆それぞれに既存のスタイルや価値観を崩す「新しい何か」を求めて暗中模索していた時代でした。

この作品の最大の特徴は、通常器楽だけで演奏される弦楽四重奏に、3、4楽章でソプラノ独唱が加わることです。この時代その思想や活動方法で注目され、シェーンベルク自身もおそらく大きな影響を受けていたドイツの詩人シュテファン・ゲオルゲの詩を用い、「苦悩から解放、そして超越へ」と向かう精神の旅が描かれます。この曲を境に彼の音楽は従来の調性を越えて、まったく新しい世界へと踏み出していきます。

第1楽章では、通常の流れを取りつつも、不安定で動揺している様子が音楽に現れ、舞曲風のスケルツォと言われる第2楽章は、優雅な舞ではなく何か切迫した感じです。