【CACI物語：卒業犬 ③ グレース】

耳の聞こえない高齢犬ガンドック　グレースの物語

 

「お願いです。助けていただけませんか？」

CACIに１本の連絡が入りました。

 

２人でお住いの高齢者ご夫婦。

ご主人が死去され、

ほどなくして奥様も病に伏し、病院で長期入院。

愛犬が１頭、残されました。

 

近隣に住む、縁者の方が通いでお世話するも

昼夜問わず、ぎゃんぎゃんぎゃん・・・泣きっぱなし。

 

近隣住民から保健所に苦情の申し入れが殺到し

矢も得ず、保健所に引き渡す算段をしていた頃に

近所の方から、CACIに救済依頼の連絡が入ったのです。

 

縁者の方のご了解を得、足早に迎えに行きました。

訪れてみると・・・・

ご自宅は見るからに“豪邸”。

しかし屋外に設置されている犬小屋といえば・・・・。

 

明らかに血統良いと思われる、美しい顔立ちのセッターが

簡素な犬小屋に、ちょこんと鎮座していました。

 

最後にシャンプーしたのはいつなのだろう？　汚れた、パサパサな毛並み。

お散歩は、行っていないのでしょうね。

リードが外されている（お散歩のために）形跡は、ありません。

 

一刻も早く連れて帰り、暖かいお風呂に入れて

たっぷりとした食事を与え、ふかふかな柔らかい安心した寝床で休ませてあげたい・・・

そう思い、シェルターに戻りました・・・・・。

 

高貴な顔立ちなので「グレース」と名付けました

年齢　12歳　　乳腺腫瘍2箇所あり

 

人が動き出すと、ぎゃんぎゃんぎゃん！吠えっぱなし。

外耳炎も酷く、歯もよくありません。

 

そして数日、シェルターでお世話して、気づいた衝撃の事実は！

 

グレース、耳が聞こえていませんでした。

＊音量にご注意ください。

 

先天か後天なのか・・・・。

譲渡されたお身内の方は、何もおっしゃっていませんでしたから

ご存じなかったのでしょう。

 

耳が聞こえないということを・・・。

 

耳の聞こえないグレース、周りの意図することを理解することは

さぞかし大変だったことでしょう。

どれ程の恐れと苦痛、

そして他者と触れ合うことのない寂しさを味わっていたことか

 

 

グレースの吠えの理由は、

“おさんぽ”　“ごはん”そして、“自由”

 

犬を飼う最低条件を満たすと、大人しくなりました。

 

 

耳の聞こえない、乳腺腫瘍を患った１２歳という高齢犬を引き取るご家庭は、いないでしょう。

CACIで、ゆっくりと余生をすごしてもらおう、と決断したその時

 

「よろしければ、我が家で迎えましょうか・・・」

おずおずと名乗り出てくださったのは、

CACIお散歩ボランティアスタッフの長尾さん。

 

長尾さんは、譲渡できる対象年齢を超えています。

長年お散歩ボランティアに携わっていらっしゃる長尾さん

鳥猟犬の扱いには熟知されており、

何より、高齢のグレースに、ゆっくりと寄り添っていただけるのではないか！

そう思い、託すことになりました。

 

 

「もう、年も年なので、犬を飼うことはあきらめていたのです。

　グレースも高齢だし、大丈夫かなって思って・・・・」

グレースを優しく撫でながら、おだやかな笑みを浮かべる長尾さん。

 

▲グレースがつまずかないよう、段差のある個所はマットレスを敷いています。

 

 

耳の聞こえない、１２歳の高齢犬グレース

残り少ない時を、ゆったりと過ごせる温かい家庭を手に入れました。

 

屋外の粗末な犬小屋で、丸くなって震えていたグレース

今では、快適な室内で、立派なシッポをブンブン振りながら

新しいパパ、ママにたっぷり甘えています。

 

 

保護された鳥猟犬が、その犬らしく過ごせることのできる

暖かいご家庭に１頭１頭繋げるCACIの活動。

今後とも見守っていただけましたら、幸いです。