最強の護衛

昨日、オンラインでお話しする機会を頂いて、その時に思い出した話を紹介します。

 

これまで、多くの人がひとのまに泊ってきましたが(本来泊めることを目的としていなかったんだけど断ったら行くとこない人だから仕方なく。現在は泊まれる一軒家を別に用意してます。)、その中でも多いのが、窃盗の前科がある出所者です。

 

結構、状況は類似していて、そこに陥った経緯こそ個人差はあれど結果的に

 

「まず、金がない。そして、家がない。そして、頼れる人がいない。」

 

この3つがそろっている人が多いです。

 

窃盗の理由も至ってシンプルで、金がなくても家がなくても頼れる人がいなくても、食っていかないと生きていけない。でも、その食べるものを得る手段がない。

 

だから盗む。そして捕まる。

 

捕まって刑務所に行く。出てくる。しかし家はない。頼れる人もいなければ金も無い。しかし食わないと生きていけない。

 

だから盗む。そして捕まる。

 

そんなこんなを繰り返していると、何となく気づき始めます。

 

塀の外よりも塀の中の方が自分の居場所があるんじゃないか。何より食う心配はいらないし。

 

そうは言っても自由はかなり制限されるので、出所した方がやっぱりいいんじゃないかという葛藤はあるのですが、出所後、金ない家ない人がいないという現実を突きつけられると、「別に捕まってもいいかなあ」という方に揺らいでいって、また盗んだり、金ないのにダメもとでホテルに泊まってみたりして、結局刑務所に戻っていく。

 

何度も繰り返すうちにいつの間にかひとのまを紹介されるようになり、ひとのまにやってくるのです。

 

そんなこんなでやってきた人たちと「じゃあほっといたらまた盗んで捕まるだけだから、今回はひとのまに泊る？」という話になるのです。

 

すると、大抵みんな同じ言葉を返します。

 

「え？そんな簡単に泊めさせてくれるんですか？だって俺ドロボーですよ。危ないとか思わないんですか？」

 

何て謙虚なんでしょう(笑)

 

「いや、だってここに泊ったらまず屋根の心配いらんじゃん。あと飯も何とかなるやん(ひとのまには常時食料が備蓄してあるし、月水金はみんなでご飯食べてるし)。そしたら盗む理由なんてないでしょ？」

 

と言うと、何でか感激されることは多くって中には泣き出す人もいます。

 

「こんな自分を信用してくれてありがとうございます。」と言いながら。

 

ひとのまは24時間365日カギが開いています。

 

常時スタッフがいるわけではないのにです。

 

まあ大丈夫だろうと思う反面、全く心配がないわけではないのですが、こんな人が泊まってくれる時は逆に安全なのです。

 

粋に感じてくれた最強の護衛が常駐しているわけですから(笑)

 

「夜とかよろしくね。」と言うと、

 

「任せといてください！」なんて張り切ってたりします。

 

その様子を見てるときっと嬉しいんだろうなあとも思います。

 

信じてもらえたことも頼られたことも。

 

そんなこともあるのですが、僕が個人的に面白いなあと思うのは、そんな窃盗犯が複数人泊まることになった時です。

 

「泊っていいけど、夜とかよろしくね。あ、あと、向こうの部屋にあなたと同じく窃盗で出所した人が住んでるから顔合わせたらよろしくやっといてね。」

 

と別々の場所どっちにも言うと、

 

「任せといてください。その人がひとのまのもの盗まないようにちゃんと警戒しときますんで。」

 

とお互いが言うのです。

 

何て面白いんでしょう(笑)