施工開始前調査開始

 

北陸は長い冬です。

特に今回のプロジェクトは、これまで冬期には難しいと感じていました屋根の鉄板を張り替える工程が含まれていますので、一層の困難が伴うと予想しています。

 

ですが、将来に遺す為の工程として不可欠ですのでやらないわけにはまいりません、むしろやりがいを感じています。

 

 

１月１３日、珍しく好天が前日まで２日間続きましたので、それまでも頑張って当法人事務所を兼ねた車掌車の外装に手を尽くしていたいのですが、クハ４８９－５０１の作業も工程を組んで材料発注をする必要から、劣化具合を確かめるべく屋根に登りました。

 

ご覧の通り、屋根にはところどころボコボコと膨らみがあり、いかにも中で錆が膨張しているのですが、開けてみるとまるでパイ生地のように水分に満たされた黒錆の層が顔を出します。

これを放置しても勿論孔は空きますが、ケレンして除去したとしても、その部分の鉄板は極めて薄く弱いところとなります。

 

で、個人的には敵にしか見えない、防水樹脂塗膜のローンテックスを除去しないと補修の全容が見えないわけですが、これも全部剥がすとなると年単位の作業と膨大なゴミの処分に困ってしまいますので、適策ではありません。

どうにか腐食した部分を含む鉄板そのものを切除しなければなりません。

 

屋根の面積は結構大きいので施工手順を間違うと後々大変な手間と事故の原因となりますから、十分な注意が必要です。

屋根の平面で一番広い、後方から始めます。

曲面部分は施工が難しいため、劣化が著しい場合を除き、そのまま活かします。

幸い殆ど劣化はありませんでした。

この曲面部分はモノコック構造車体においては剛性を保つフレームの要素もあり、いじると後で車体そのものが変形する危険性もあるので、今後も要注意です。

 

曲面からほぼ平面になるラインで、ローンテックスの下から鉄板の継ぎ目を確認。

この継いだ板の厚さ、元々の鉄板の厚さは重要で、今後後世に遺す為の施工ですから張り直す板は劣化そのものをしてはならないし、仮に再張替えとなっても、工程を簡便にするのが今回の施工の肝です。

 

継ぎ目の下はトイレですので、恐らくトイレのリニューアル工事をした際に内装材を搬入する開口部としたのではないかと思います。

改造車両ではよくある事で、新製車においては１２系客車や１４系客車もトイレ側の屋根に開口部を予め作ってあります。

開口部を埋めたと思われる鉄板は1.6㎜厚、元々の車体鉄板も1.6㎜厚です。

車両設計の際には必ず板厚も考慮しなければならず、10系軽量客車の場合はこの板厚を薄くし過ぎた反省もあり劣化進行が極端でしたので、20年持たないものが多くありました。

 

調査補修の最後に白い錆止めを塗布しまして、施工済みの目印としました。

調査のため通常速度より遅いとはいえ、およそ2時間で、30×80センチ程度しか施工出来ませんでした。

それほどローンテックスは車体補修には邪魔です。

側面補修で難儀した分厚いパテのような粉じんはほぼありませんし、上から見下ろす作業は体力的には楽です。

しかし叩き割る事が出来ない点では極めて厄介な存在ですから、今後の施工方法、もっと考えるべきとは思いました。

まだ調査は続きます。

むしろこの曲面部分を全て終わらせるのが、新たに使用する2.3㎜鉄板の発注数を決める判断材料です。

2.3㎜鉄板は重いので、一度発注しても現場の床置きというわけにはいきません。

多分屋根にユニックで載せてもらう事になりますので、その工程の支障にならないような準備も、調査の一環になってまいります。

 

色々複雑な屋根補修です。