応援メッセージ紹介｜榎原 雅治様（東京大学名誉教授）

 

創建1350年をお祝い申し上げます。

 

修験道では大自然と神仏と人が一つにとけあいます。それは宗派の違いを越えて日本人がいだく宗教心の原点ともいえるでしょう。

 

吉野山の櫻本坊は古代以来の大峰山の修験道の伝統を受け継ぐとともに、多くの貴重な文化財も伝えています。坊でお守りされている大般若経600巻の写経は、鎌倉時代、2000人以上の人が参加して、たった1日で成し遂げられたものです。700年前の人々の、心とこの世の安定を求めた祈りの真剣さがうかがえると思います。その祈りに思いを馳せ、後世に伝える努力をすることは、我々自身が後世を想像し、希望ある未来に向けて祈ることにつながるでしょう。

 

私が数年間にわたって大般若経の調査をさせていただいた櫻本坊の大講堂からは、空と山と吉野の里が一体となった、季節それぞれの景色が一望できます。

 

過去の人々の思いを知り、未来に伝えていくためにも、大講堂とそこからの眺めがいつまでも続いていくことを願ってやみません。

 

榎原雅治　東京大学名誉教授