「あきらめない」【小松有彩／出演者】

小松有彩です。演劇が、お芝居が好きで、ずっと続けたいと思っています。

33歳、去年の10月にはじめて子どもを産み、母になりました。

なんとなく、私は子どもを産んでもそこまで変わらないんじゃないかと思っていた。

産後すぐは大変だろうけど、落ち着いたらまたウエストがキュッて見える格好とか、いい形のデニムとか、かわいいちっこいバッグとか、ゆるやかに子どもを産む前の生活に戻るんじゃないか。

生まれた直後から分かった。そんなものはない。授乳おむつ替え沐浴寝かしつけ洗濯、自分の時間が、ものすごい勢いでもうひとつの命を守るために費やされていく。自分の服？趣味？そんなことより目の前のうんこである。アラァ泣いちゃったね！どちたの〜

そして、あらゆるものを遥かに飛び越えて、子どもは。子どもは、かわいい。おでこからただよう甘い匂い。ぽちゃぽちゃの手足にあーうーおしゃべり。きらきら光るよだれの滝。ひとりでは到底知り得なかっただろう愛しさとか、強さとか、全部詰まっている。この子がすべてだ。どんなことも、ひと笑みで帳消しになる。生まれる前は信じられなかったけど、これはほんと。生きててくれるだけでいいよ！

ちなみに子育てと演劇の相性は全然よくない。1番の問題は、「その間子どもの面倒は誰がみるのか？」。

平日夜間の稽古。地域の預け先、がんばっても大体18時、19時ぐらいまで。稽古は？22時まで。民間のシッターサービスもあるけれど、継続してお願いするのは現実的でない価格感…それで稽古は？22時まで。え？22時まで。どうしろっちゅうねん！

私は、たまたまわりと近くに子どもを託せる親がいて、家族が有休を駆使してくれるおかげで、どうにか演劇をやっている。それでもぎりぎりだ。ほんとうに、奇跡というか、偶然だ。ものすごくやりたいけど、やれているのはもう偶然。実際、1月の明後日の方向の公演までと、その先は、今のところ出演予定は何もない。こんなにやりたいのに。かといって、オーディションやワークショップに行くのも、もう、だいぶ難しい。

よほど諦めてしまった方が楽なのかもしれない。でも、まだやってみなくちゃわからないし！せめて「やってみよう」ができるうちは、やってみたいと思う。

娘が大人になる頃には、もうすこしましな世界をプレゼントできるように。

わたしの挑戦はつづく。