ヤコブセンの薔薇

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蝦名さんの生前唯一の詩集『カール　ハインツ　ベルナルト』（伊丹イタリア　私家版1994）のなかに、「ヤコブセンの薔薇」というタイトルの詩があります。

ヤコブセン？

ヤコブセンという種類の薔薇があるのかと思っていました。
あるいは、「ヨブの口笛」というタイトルの詩もあるから、ヨブと同様に、聖書の人物の名前かと思いました。
何だかわからないままだったのですが、いまは検索というものがすぐできる。

イェンス・ペーター・ヤコブセン（1847-1885）。デンマークの詩人でした。

「ここに薔薇ありせば」（矢崎源九郎訳）という作品があり、その最初の文。

　

　　ここには薔薇が咲いたにちがいない 。

 

ああ、これがヤコブセンの薔薇。
リルケの『若き詩人への手紙』のなかで、リルケが、座右に置いている2冊の本として挙げているのが、バイブルとヤコブセンの書物、なのでした。

 

大好きな詩のひとつです。ヤコブセンの薔薇。

 

 

 

　　　ヤコブセンの薔薇　　　　

　　　　　　　　　伊丹イタリア（蝦名泰洋）

 

嫌われているとは知らないで

水晶の空の下

幸福な魚のように

仲間に会いに行った

 

（略）

 

気づかなければ　きれいな花束

薔薇も

笑顔も

嘘の言葉も

 

黒曜石の空の下　歩いて帰る　

私と

ヤコブセンの薔薇

目隠し鬼の

私と

ヤコブセンの薔薇