避難指示が発令されても医療機器が必要な方は避難しない？

これまでの研究結果の一部を紹介します。

 

医療的なケアを必要としている方を対象に、災害への備えや避難指示が発令された場合に避難するか否かについて等を調査しました。

 

• 避難指示が発令されても43.4％の方が避難をしないと回答しました。

 

調査結果を統計学的に解析したところ、

 

• 医療機器が必要な方は、必要ない方と比べて、避難指示が発令されても5.3倍避難しない意思を示した方が多かった。

 

海外の報告でも、健常者と比較すると、医療機器を要する人は自力で歩行ができない等、移動手段が限られていることから避難する可能性が低いことが指摘されています。本研究でも、医療的なケアが必要な人は、たとえ避難が必要な状況になったとしても、容易に移動ができないことを示唆していると考えられます。

 

避難しないという表現を用いていますが、けして避難したくないわけではなくて、避難したくても容易に避難できない状況にあると解釈できます。

 

実際に地域でお話を聞くと、避難指示が出ても「ギリギリまで家で頑張って、その先は、どうにでもなれ！って感じです」、「仮に体育館に行けたとしても、自分の身体で過ごせるとは思えない」との声や、「無理！」と一言で終わったご家族、「僕の状態で避難できると思います？」との逆質問もありました。

 

これがわが国の現状です。どう考えてもこの状況を改善すべきです。

そのためには、平時より個別で有事の際にどうすべきか、ご本人がどうしたいか、何が必要か、どういう避難の選択肢があるのかを話し合い、訓練を行っていく必要があります。みんなで議論し、ご本人の意思決定に基づいて役割を決めて対策していくためのツールとして、K-DiPSは役に立つと考えて開発しています。

 

出典：Journal of Community Health Nursing, 33(4), 2016