熊楠のフロックコート

昭和４年６月１日、昭和天皇が紀南行幸された際、南方熊楠は護衛艦８隻に守られた田辺湾に浮かぶお召し艦「長門」の上で、採集した生物標本をミルクキャラメルの大箱１１箱に詰め、ご進献するとともに２５分間ご進講をしました。

その際、身につけていた服装が、今回、整備保全をするフロックコートになります。

このフロックコートは、熊楠が在米中に友人の三好太郎からもらい受け日本で仕立て直したものを着用しご進講したという説でしたが、その後、熊楠の日記や書簡、写真等の調査から、本人が在英中に誂えたものということが現在の説となっています。

熊楠は服装には無頓着で、年中裸で過ごしていると世間では噂され、ご進講を危ぶまれる声もありました。
しかし、イギリスでの生活経験から英国流の礼儀をわきまえ、フロックコートに身を包み直立不動でご進講をすませたと言われています。