#アンモナイト豆知識　古生態編２　プラビトセラスの古生態

二枚貝に寄生されたプラビトセラス　そこから判明した生活スタイル

ユーボストリコセラス・ムラモトイは海底面に接地して暮らす「底生生活者」だった可能性が高いようですが(前回参照)，異常巻きアンモナイトの西日本代表とも言える「プラビトセラス」はそうではなかったようです．まったく異なる視点から考察が行われた研究例をご紹介します． 

御前博士（北九州市立いのちのたび博物館）らは，和泉層群から採集したプラビトセラスには高確率で二枚貝が付着していることを発見し，しかも殻の両面についていることなどから，死後に偶然付着したものではなく，生きていた時から寄生されていた可能性が極めて高いものであることを示しました．

また，生息当時，体の下側に位置する成年殻の住房部分（アンモナイトの軟体部（つまり，お肉）が入っていた部分）にも二枚貝が付着していました．もしも完全に海底面に接地して生きていたとしたら，この部分に二枚貝が寄生するとは考えにくそうです．この事から，海底面から浮いて水中を生活していたのではないかと推測されました．

この研究は，化石がどのような状態で産出するかを詳しく調べ，その状況証拠から生前の生活についての結論を導き出しています．このように「遺体」を調べ，その生前から死んだ後までを含め，その生き物にはどんな出来事が起きたのかを調べる学問を「タフォノミー」と言います．

古生物学者が化石を扱うときは最初に「タフォノミー」を探求したのち，その化石の持つ生態情報を抽出することで，復元の精度を上げていくのです．