既存薬を使った抗がん剤の開発　＃３酸化ストレス②

 

私達は既存の薬剤を用いた抗がん剤の開発を行っております。

この治療法は、酸化ストレスを利用し、がん幹細胞を倒すことで、がんの治療を行うことを目的として開発しています。

 

今回は、私たちの研究における「酸化ストレス」について少し説明します。

 

 

酸化ストレスを上昇させる方法

 

前回お話した酸化ストレスの大元である「活性酸素」とフェロトーシス（酸化ストレスによる細胞死）に関わる「過酸化脂質」を抑えこむメカニズムが、がんには備わっていて、がん細胞死を防いでいます。

 

そのため、私達の開発では「活性酸素」を抑え込む「グルタチオン」、「過酸化脂質（正確にはアルデヒド）」を抑え込む「アルデヒド脱水素酵素」の働きを抑えることで、がん細胞死を引き起こしています。

 

※私達の開発では、過酸化脂質が構造変化を起こした細胞障害性アルデヒドが本来の標的ですが、ここでは便宜上、「過酸化脂質」として扱います。

 

まずグルタチオンの抑え込みについてですが、これはグルタチオンの原料であるシスチンが細胞内に入ってくるのを抑えることで、グルタチオンを合成できなくします。具体的には、シスチンの取り込みはxCTという分子が担うので、これを抑制しています。

 

次に、過酸化脂質の抑え込みですが、これは分解を担うアルデヒド脱水素酵素（ALDH）の働きを抑え込むことで、分解をストップさせます。

 

これを同時に行うと、がん細胞が酸化ストレスを処理しきれずに、フェロトーシスという名の細胞死が起き、がんを倒すことができます。

 

 

これは掃除機（グルタチオン）が壊れ、ごみ捨てもできない（ALDHが働けない）状態になり、家の中が荒れてストレスが強い状態に似ているかもしれません（笑）。

 

次回は、この薬の中身について具体的に説明します。