【コラム：進行性脊髄軟化症・椎間板ヘルニアの原因と予後】

*この情報は、私たちがイブラの治療を奮闘する中で調べた範囲です。
診断・治療の方針や詳細な検査・処置は、必ず獣医師の指示を仰いでください。

イブラが発症した「進行性脊髄軟化症」は、犬の椎間板ヘルニアが重度に悪化したときに起こる、非常に危険な合併症です。

🦴 椎間板ヘルニアとは

背骨の間には「椎間板（ついかんばん）」という柔らかいクッションがあります。この椎間板が老化や遺伝、無理なジャンプなどで壊れ、中のゼリー状の部分が飛び出して脊髄（神経の束）を圧迫してしまうのが「椎間板ヘルニア」です。軽症のときは痛みやふらつきだけですが、重症になると足が動かなくなる・排泄ができない・痛みを感じないなどの症状が現れます。
病院ではその重症度を「グレード1〜5」で表します。

• グレード1〜2：軽度の痛み、ふらつき

• グレード3：後ろ足の力が弱くなる

• グレード4：立てない、でも痛みは感じる

• グレード5：完全麻痺。痛みを感じない（深部痛覚消失）

イブラはこのグレード4〜5の間に相当し、最も危険な状態でした。

💔 進行性脊髄軟化症とは

椎間板ヘルニアで神経が強く圧迫されると、脊髄の一部が壊死して「柔らかく溶けるように崩れていく」ことがあります。これが進行性脊髄軟化症です。後ろ足から始まった麻痺が、数時間〜数日で前足、胸、呼吸筋へと広がり、呼吸ができなくなって亡くなってしまうこともある、非常に致死率の高い病気です。残念ながら、進行を止める薬や治療法はまだ確立されていません。そのため、発症した場合はすぐに手術で脊髄の圧迫を取り除き、あとは“その子の生命力”にかけるしかないのが現状です。

🌱 回復の可能性について

軽度（グレード1〜3）の椎間板ヘルニアでは、手術や安静で90％近くが歩行を回復できるという報告があります。一方で、イブラのようなグレード4〜5の重度ケースでは、歩けるようになる確率は30〜50％程度。さらに「進行性脊髄軟化症」を併発した場合、生き延びられるケースの方が少ないと言われています。だからこそ、イブラが2度の大手術を乗り越えて今こうして生きていること自体が、本当に奇跡的なことなんです。

🐾【同じ病気で苦しむ子たちへ伝えたいこと】

この病気は、本当に「一瞬」で生活が変わってしまいます。イブラも、発症の前日までは元気に走り回っていました。そんな経験をしたからこそ伝えたいのは――「少しの異変でも、迷わず病院へ」ということです。

🔍 こんなサインがあったらすぐ受診を

• 歩き方がふらつく、後ろ足がよろける

• 背中を触ると痛がる、鳴く

• 急に階段やソファを避けるようになる

• 尻尾を振らなくなる

• 排泄がうまくできない、尿が出にくい

「たまたまかな？」と思っている間に進行してしまうこともあります。
1時間でも早く診断・処置を受けることで、命を救える可能性が上がります。

🏠 日常でできる予防

• 階段やソファのジャンプを控える

• 滑らない床材（マットなど）にする

• 太らせない（肥満は最大のリスク要因）

• 定期的に背中や歩き方をチェックする

*私たちも事前にリスクは把握し、予防はしていたのですがそれでもイブラは発症しました。
もちろん日常での予防も有効ですが、先天的な要素も有るとのことです。

私たちのプロジェクトが一人でも多くの人の目に触れ、飼い主さんたちが予防の大切さを改めて実感し、同じ病気に苦しむ子が1匹でも少なくなることを願って発信を続けます。