福島の人たちに山中湖がもたらしたもの　＃沖 利柯

 

東日本大震災の後、東京YMCAは被災地支援のキャンプを継続的に行ってきました。

 

「放射能を気にせず思いっきり遊びたい。」そんな思いを抱えた福島のご家族や小学生を対象にした山中湖センターでのキャンプは、2011年から2019年の9年間で45回開催。参加延べ人数は1,638人となります。

 

放射性物質の影響を強く受けた福島の人たちは、目に見えない恐怖と戦っていらっしゃいました。当時は「福島から少しでも離れたい」「自然の中で安心して子どもたちを遊ばせたい」という保護者の方々の思いが溢れていました。またYMCAも日々の生活に疲弊しておられる保護者を含め、日常を忘れて楽しんでいただきたいと願い、数多くのキャンプを行ってきました。

 

雄大な富士山と山中湖の自然は、福島の人々の心を明るく前向きにしてくれたように思います。家族で一緒に力を合わせてボートを漕いだり、野外料理やクラフトに挑戦したり、食事のときに大きな声でキャンプソングを歌ったり、キャンプファイヤーでは火を囲んで子どもはもちろん大人も童心に帰って羽目を外したり。
そして子どもたちが眠った後、大人たちはお酒を酌み交わしながら様々な思いを語り合いました。震災のこと、子どものこと、時には涙を流しながら…。
キャンプの最後には、「子どもたちのあんなに楽しそうな顔は久しぶりに見ました。そして何より親の自分自身がリフレッシュでき、明日からも福島で頑張る活力になりました。」という感謝の声をたくさんいただきました。

 

「ぜひもう一度山中湖に行きたい」という要望に応えたリピーターキャンプも実施しました。そのキャンプでは、参加者の中からボランティアを募り、シェフの本格的な料理、足つぼマッサージやアロママッサージなど、ご自身のお仕事や特技を活かした本格的なチョイスプログラムを担当してもらいました。それは何かをしてもらうだけではなく、自分のできることを他の人のためにしたいというお気持ちからでした。

山中湖センターとその自然は、被災した皆さんの心を癒し、前に進む勇気と元気を与えてくれました。被災された方のみならず、これからもきっと多くの人々の心に残るキャンプ場であり続けるのだと思います。

 

公益財団法人 東京ＹＭＣＡ

東陽町コミュニティーセンター

地域コーディネーター　沖 利柯