大阪に学ぶ

久々に大阪のお得意さん回りをしてきました。大阪には島田商店さんとハレトケさんという小売店さんにお世話になっています。島田商店さん地酒販売の全国の先駆者で、もう50年以上のお付き合いです。場所は立売堀（いたちぼり）、西郷輝彦さん主演の「どてらい男」というテレビドラマを見た方もおられると思います。あの舞台が立売堀、今でもモデルになった山善さんの本社ビルがあります。私も子供の頃「商売人の子はこのドラマしっかみとかにゃん」と親に言われ見てました。西郷さんの役名が山下猛造、私と同じ山下（モデルは山本猛夫さん）で藤岡重慶さんが「やましたー！」と唸っているのが印象的でした。ハレトケさんは地酒専門店を開くに当たって全国の造酒屋を訪ね歩きうちにもおいでになり、現在まで取引を続けて頂いてます。JR大阪環状線福島駅近くて「売れても占い商店街」にあります。

さて、大阪は私が大学時代を過ごした町です。当時まだ道頓堀の中座では藤山寛美さんの松竹新喜劇、角座では笑福亭松鶴、宮川左近ショー、ちゃっきり娘きら星のような芸人さんが技を競っていました。そんな話芸の都大阪で特に熱心に聞いていたのが桂枝雀さんでした。オーバーなアクション、人物描写の的確さ、大阪弁のきれいさ、「上方落語ってこんなおもろいもんなんだ」と覚醒させられました。言葉で人の心を豊かにし、慰め、励まし、人の道を諭す、笑いと涙、浪速の地でしっかり学ばせて頂きました。

通潤は今回のプロジェクトで「酒蔵見学」を4つの目標に入れています。酒蔵ツーリズムは酒蔵を見てもらったり、お酒を試飲し、お料理を楽しんで頂いたり色々楽しみ方があると思いますが、通潤では「案内」を最重視したいと思っています。おいで頂いたお客様に生の声でしっかり説明し、たまには笑って頂いたり、感心して頂いたり、これこそ酒蔵ツーリズムの核心だと思っています。「いらっしゃいませ」では次に言葉が続きませんが、「どこからおいでになりましたか」はお客様との会話の糸口になります。毎回同じ案内ではあきません。枝雀さんは落語に「生活」を入れるといわはりました。生活とは今起こっている身近のことです。例えば「米価高騰問題」、造酒屋や消費者には苦しい事ですが、米農家には一筋の光が見え始めた問題です。この矛盾する問題を、農家、消費者両方接している造酒屋だからこそ出来る緊張と緩和の話芸で皆様に笑って共感して頂くのも酒蔵見学の醍醐味やと思います。浪速の地で学ばせて頂いた事をしっかり生かして、楽しくて為になり、お客様から「おもろかった、又くるでー」のお声が聞けるよう精進して参ります。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　通潤酒造株式会社

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　12代目　山下泰雄