耕作放棄地を再生した、命のある土地

私が有機農業（無農薬栽培）をやろうと思ったきっかけは、父が楽しそうに取り組んでいて、当時自分がいたボクシング業界より楽しそうだぞ、という単純なものでした。

しかし、農業を続けていく中で実感したのは、自然を相手にするという事がいかに大変かということと、農業の奥深さです。

耕作放棄地を借り受けて栽培していく中で、種をまいても芽が出ない、草も生えない、生き物もほとんどいないという土地がありました。

農薬や化学肥料を使い続け、耐性ができた虫や草に対して新しい薬を使うという、これまでのイタチごっこ。その果てに、命が消えかかり、獣も増えて放棄された山間の土地。

「こんな土を次の世代に引き渡してはいけない。」その一心で手入れをし、そこから草が生え、生き物が増え、無農薬栽培ができるようになりました。3年の道のりです。

植物は人が育てなくても育ちます。それを、人は人の都合で栽培させてもらっています。

一言に農業と言っても千差万別で、米とエゴマを中心とした有機農業は、その広いカテゴリーの中の1つの競技のようなものでもあり、自然と共存する手段です。