【CACI物語：卒業犬 ⑱「リアン、いくら」】

 

 

今から十数年前クレー射撃をする為、千葉県山中にある射撃場を訪れた時のことです。

ガリガリに痩せたポインターがお弁当の残りをもらって食べていました。

尋ねると県外から来て、山に捨てて行く人が結構いるのだと話してくれました。

 

ある日その射撃場の駐車場に1台の車が停まると、その犬がちぎれんばかりにシッポを振って車に近づき側から離れなかったそうです。

自分が乗り慣れた車？懐かしい飼い主の匂い？　だったのかもしれません。

車から降りて来た人は、犬を蹴飛ばして立ち去って行ったそうです。

 

次に射撃場に訪れた時に、あのポインターが亡くなった事を聞きました。

それ以来“猟犬”は、私の心に残っていました。

 

その後インターネットで鳥猟犬を専門に保護している団体、CACIを知りました。

犬を迎えるならばCACIから！と決め、2011年12月にまだ若いバリバリ猟欲の塊のようなセッター女子を迎えたのです。「りあん」です。

先ずは家の中での暮らしに慣れること。

しかし窓の外を雀が飛べば家の中を走り回る。外に出れば夢中で鳥を探し、引っ張り回す、そんな犬でした。

あの頃は真剣に「この世の中から鳥が居なくなって欲しい」と思ったほどです。

そんな「りあん」も我が家に来てはや9年。

家の中では、まったり。外に出れば風の様にフィールドを走るONとOFFがハッキリした、人に寄り添う優しい娘になりました。

りあんの里親になった事でCACIの活動をより身近に感じるようになりました。一頭一頭の犬を大切に、怪我や病気の犬でも受け入れる姿勢はいつも変わらず。真摯に犬達と向き合うCACIから次も迎えようと思っていました。

 

そして、やって来たブリタニー・スパニエル 「いくら」です。

 

「いくら」のお母さん「さくら」は雄のブリタニー「ゴン太」と共に山中に捨てられていました。雨の降る夜、ガリガリに痩せて衰弱し車道に倒れていた「さくら」。「さくら」を行き交う車から「ゴン太」が守るように座っていたそうです。

その姿を見て車で通りかかった方がびしょ濡れの犬たちを保護して「さくら」と「ゴン太」と名付けられました。そしてTwitterを通してCACIへ繋がり、さくらとゴン太を保護することになったのです。

保護した日の夜中、さくらは2匹の仔犬を出産しました、誰もさくらが妊娠しているとは思っていなかったそうです。産まれた仔犬は「いくら」と「きゃびあ」と名付けられました。「いくら」と「きゃびあ」は命のバトンが繋がり、心優しい方々のお陰でこの世に生を受けました。

その後「いくら」は我が家へ「きゃびあ」は友人宅に迎えられ、今でも時々姉妹で遊んでいます。「さくら」と「ゴン太」もそれぞれ新しいご家庭へ迎え入れられました。

▲いくら

 

 

▲リアンといくらはFT競技でも元気いっぱい活躍しています。

 

▲リアンといくら　良いコンビです。

 

 

CACIの卒業犬達は同窓会で年に一度顔を合わせます。いくらもお母さんのさくらやゴン太にも会えました。

集まった犬達は皆、「命の期限」がありました。

それが今では、どの犬も家族がいて幸せいっぱいの笑顔です。

 

命を繋いでくれたCACIには本当に感謝しています。