何もできないなりにできることを

「宮田さんのところに初めて相談に来てもう8年ほどになりますが、状況はあんまり変わらんですわ。」

 

もうすぐ80歳になるという男性にそう言われてギクリとします。

 

そして男性はこう続けます。

 

「息子がひきこもった時に、本当に全国どこでも相談に行ったんですがね、どこに行っても『親は悪くないですよ』という話をされるんですわ。いやあ本当にそうかなあと思うわけですよ。親が悪くなけりゃあ、じゃあどうしろって言うんだと追い込まれるわけですわ。そんな中、『親にも原因ある』と言った人が2人おったんです。そのうちの1人が宮田さんです。もう1人は『親が悪いんだからあなたが変わるしかない！』と𠮟るような感じでねえ。だんだんしんどくなって逃げちゃったんです。そんな中、宮田さんは『親が悪いっていうか原因は少なからずあるでしょ。そりゃあ親子だからいいところ悪いところ影響があるのは当たり前じゃん。他人でも関わってたら何かしら影響あるんだから親子ならなおそうでしょ。』とくるわけですよ。そりゃあそうだと。そして『誰が悪いとか言い始めても何も始まらないから今からできること一緒に考えましょうよ。家行けそうなら家行きますよ。』と言ってくれたわけです。その時の感激は未だに忘れられんですよ。」

 

ああ、お叱りの言葉を投げかけられると思ったらそうじゃなかったのねとホッとしたのもあるのと同時に、

 

8年も関わっていながら大して何も変化が起きないことへの申し訳なさも込み上げてきます。

 

「8年間、大して状況は変わりませんがね。宮田さん。あの日から私の人生は変わったんですよ。それまでは本当に孤独でした。本当にどうにかしたいと思っているのに誰もわかってくれないって。同じひきこもりの子を持つ人の集まりに行っても「親のせいじゃない」って言いあってるのを聞いて毎回思うわけです「自分は悪くない。」って言ってて、どうやって向き合えるんだって。もし、親に原因があったらどうするんだって思うわけです。いろんな相談窓口もそうです。「様子を見ましょう。親は悪くないです。」って。本当にどうにかしたいと思っている私がおかしいのかと本当に孤独に追い込まれました。途方に暮れてました。あのままだと子ども殺して私も死んでたと思います。でもあの日から、一緒に考えてくれる人がいるんだな。一緒に動いてくれる人がいるんだなって思えたのが本当に嬉しくてですね。そんな感じでいれるから、私は子どもを殺さずにそして私も死なずにこれました。本当に感謝しかない。そして、これからは私も私の経験で伝えれることを伝えて、いつかの私みたいに孤独な人に寄り添えたら。そう思うわけですよ。」

 

そう伝えられて、泣きそうになりました。

 

そんな特別なことをやれる力はありませんが、一緒に考えていける距離にはいれるようにこれからもひとのまを続けていこうと思います。