サイの日常

治療対象のチンパンジーの日常を少し紹介します。今回は、サイという名前のチンパンジーです。

肝炎研究時代にチンパンジーは番号で整理されていて、その番号が３１番だったチンパンジーは、「３１」にちなんでサイという名前になりました。
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毎週金曜は日替わりエンリッチメントのジュースの日です。
と書かれても、「日替わりエンリッチメント」って何？「ジュースの日」って何？と思われるかもしれません。

「エンリッチメント」とは、「豊かにすること」というような意味で、動物飼育の場面では、生活環境を豊かにすることを指します。毎日同じことの繰り返しの単調な暮らしでは、刺激が少なくて、異常行動が出てくる場合があります。

熊本サンクチュアリでは、日替わりで小さなイベントを用意しています。
「ジュースの日」は、屋外の運動場に設置した筒にジュースを入れて、そのジュースをチンパンジーが道具を使って飲む（というより「なめる」に近いです）仕掛けをセットする日です。

朝、スタッフがジュースを準備しているのを見ると、部屋の中で待っているチンパンジーのみんなは嬉しそうに声をあげ始めました。チンパンジーも、毎日違うイベントを楽しみにしていて、スタッフの動きで今日は何の日かを察しているようです。外の運動場に出るとジュースがある、ということが分かっています。

そんなとき、サイは、部屋の中で、道具として使う棒の準備を始めました。
下の写真のように、枝を道具に使ってジュースなめをするのですが、そのための道具を部屋の中で準備したということで、これから何が起こるのかを理解して、そのために必要なことが何かも分かっている、ということです。サイ、賢いですね。

＜上の写真の筒の中の液体はなんだか赤い血のように見えてしまいますが、野菜ジュースです。＞

部屋で待っているあいだ、サイは、「ヴェーヴェー」というような声をあげていました。この声はサイだけが出す彼女独特の声で、スタッフに向かって何かをアピールするときに使います。この場面では、「早く外に出せ！」と言いたいのでしょう。
スタッフがサイの部屋から運動場に通じるドアを開けると、サイは棒を片手にジュースのもとへまっしぐらに走っていき、器用に棒を使ってジュースをなめ始めました。
外にはもっと使い勝手の良い枝があったようで、準備していた棒はあっさり捨てられていましたが、ジュースをおいしそうに堪能していました。

サイがこれからも元気で暮らしていけるように、C型肝炎治療をおこなっていきたいと思います。

サイも含めたチンパンジーみんなの治療ができるよう、引き続きのご支援、ご協力をどうぞよろしくお願いします。