住職のひとりごとコラム：時々、事件が起きる

住職を継いで間もない頃のこと。

穏やかな朝、日常の業務に追われる住職のもとに、副住職が話しかけてきた。

副住職：「今日、大日如来を見学に女性二人が来るって連絡があったの」

住職：「了解。仕事があるから出勤する。あとは任せた。」

そして昼過ぎ。突然、住職の仕事場に電話が鳴り響いた。

副住職：「早く戻ってきて！女性二人の予約だったはずなのに、不気味な男が二人来たの！」

住職：「何？すぐ戻る！何かあったら、警察を呼ぶんだ。ところで、予約した名前は？」

副住職：「伊藤聖子さんと三浦ジュンさん」

住職：「訪問記帳をお願いしておいてくれ」

急いで仕事場から、寺に戻った住職。

しかし怪しい男たちは既に帰ってしまったという。

副住職は何事もなく平和だったと報告し、記帳も無事にしてもらったらしい。

住職：「よし、記帳を確認しよう」

その瞬間、住職の顔が一変する。

住職：「えっ！これは！」

副住職：「どうしたの？」

住職：「色紙にサインをもらわなかったのか？」

副住職：「いらんやん。変な二人やったし」

住職：「違う！あの二人は変な人じゃない！仏教界のアイドルとスーパースターだ！」

副住職：「はぁ？」

住職：「いとうせいこう様とみうらじゅん様だよ！会いたかったなぁ…。サインと写真が欲しかった…」

後日、このエピソードは『見仏記』に掲載されたという。

いや、住職にとって未だに心残りである。