住職のひとりごとコラム：境内の晴れ時々事件あり

静寂に包まれた夜の境内。

そこはまるで、俗世から隔絶された聖域のようです。

しかし、時折、その静寂を打ち破るかのように、小さな波紋が広がります。

神聖な空間を汚す賽銭泥棒の影。

参道の隅に無造作に捨てられたゴミ。

そして、消防署の名を騙る訪問販売の、不気味な足音。

本日、また一つ、悲しい出来事が起こりました。

母が丹精込めて植えた紫陽花の苗が、忽然と姿を消したのです。

青、紫、あるいは純白の花を咲かせるはずだった苗。

それは今、どこかの土に根を下ろし、風に揺られているのでしょうか。

誰かの優しい手に守られ、美しい花を咲かせる日を待っているのでしょうか。

想像するだけで、胸が締め付けられます。

どうか、心ある人に大切に育てられ、いつか誰かの心を彩る花を咲かせてほしい。

しかし、苗を失った母の心には、ぽっかりと大きな穴が空いてしまいました。

「あの紫陽花に、どれほどの想いを込めていたか…」と、母は呟きました。

その声は、私たち家族の胸にも深く突き刺さりました。

どうか、どうか、あの紫陽花の苗が、心ある場所で大切に育てられますように。

そして、いつか美しい花を咲かせ、見た人の心に、温かい光を灯してくれますように。


住職「何か、悪いことしたかな…」
副住職「仏様は全てご覧になっています」
住職「…心当たりがありすぎる」
副住職「明日からは、心を入れ替えて」

住職「精進します」