理学部が保管している動物標本

理学部が保管している動物標本は、そのほとんどが、明治から大正にかけての奈良女子高等師範学校時代に集められたものです。それらは無脊椎動物から脊椎動物まで約3,000点にもおよびます。これらの収集は、女子高等師範学校で教鞭をとった桑野久任（くわのひさとう）氏の尽力によるものです。桑野氏は海産動物学を専門とし、半索動物のギボシムシ類の日本における最初の研究者として著名です。女子高等師範学校時代の博物館の教材として代表的な分類群が浸透、剥製、骨格の標本によってくまなく取り揃えられました。網羅的であるばかりでなく、現在では手に入れにくい貴重な生物も含まれている点が、本学のコレクションの特色です。
希少性の高いものとしては、日本から絶滅したとされる哺乳類のニホンアシカや鳥類のトキ、キタタキが注目されます。ほかに哺乳類のカモノハシ、アマミノクロウサギ、ツシマヤマネコ、オガサワラオオコウモリ、鳥類のメグロ、そして、無脊椎動物では、ヒドロ虫の個虫として世界最大の深海産オトヒメノハナガサや小笠原諸島固有の天然記念物の貝カサガイなどもたいへん珍しい標本です。また1,700点近くにおよぶ貝類の標本は、日本で最初の貝類博物館「平瀬介館」（ひらせかいかん）より寄贈されたものです。