いよいよ、完成間近です。

複製掛軸の色校正に行って参りました。

コロタイプで刷り上がった最初の１枚を確認し、実物と比較して印刷の出来栄えを確認します。

第一印象は、本物と見まがうほどの精巧さです。

360余年前の紙の風合いや色味、経年劣化による微細なキズや汚れに至るまで、細部にわたって再現されていました。

紙の質感までもが再現されているのが、他の印刷にはない特徴です。

複製だけを見れば、そのまま表装してもよさそうな完成度でした。

しかし、実物を並べてよく見ると、今まで気付かなかった筆の運びの繊細さや墨の濃淡の違いが見えてきました。

特に祝偈の周囲に描かれた鶴の絵が、よく見ると複製では描ききれていないことに気付きます。

筆のかすれ具合や、文字によっては墨をつけ直したであろう墨の濃さなどを、職人さんと一点一点細かく確認していきました。

朱肉の赤と、墨の黒。２色の複製は現物と比較した際、その違いが素人目にも分かりやすいので、その点は通常の印刷よりも難しいそうです。

色校正が終わり、次は表装に使う裂（きれ）の確認です。

昭和に一度補修した掛軸ですが、いかんせん古いものなので、現在入手できる生地から色や柄が近いものを用意していただきました。

できればもう少し近い紋はありませんか？などと職人さんに無理をお願いする運びとなりました。

裂の確認段階で、またしても今まで気付かなかった発見がありました。

風帯と一文字の裂が統一されていないのです。通常、多くの場合はこの風帯と一文字は同じ裂が使われるそうです。

再現性を最大限に保つようにお願いしました。

いよいよ３月末には複製された掛軸が納品されます。

4月3日は開山忌、隠元禅師のご命日です。

今年の開山忌から、皆様にご協力いただいた掛軸がお目にかかれることとなります。