【自由民になりたいラジオ：配信レポート】第3回「地域と共にある図書館の役割とは」

◆「知の植民地」で終わらないために。

番組では、海青子さんが翠山大学のプロジェクトにどんな想いで関わっているかが語られました。そのきっかけは、水俣で活動する方から聞いた「水俣は知の植民地だ」という言葉だったと言います。

海青子さん： みんな水俣にやってくるんだけど、学んで吸い上げて、またどっかに帰っていってしまう。水俣には残らない、みたいなことを、すごいおっしゃってたのが心に残って。やっぱそうじゃない学術研究のあり方とか、そうじゃない図書館のあり方っていうのを、じゃあ翠山大学は作れるのではないかな、っていうふうに思ったんです。

この構造は、人の経験を「学術的な価値」だけで判断し、都合よく切り取ってしまうことにも繋がると海青子さんは続けます。

海青子さん： （水俣での体験を話してもらう時にも）学術的に価値があるかどうかで、こうピックアップしていて、その人がその土地で、生きてきた丸ごとっていうことはなんか受け止めてないし、受け止めてもらってないっていう感覚が住んでる人の側にはあるんじゃないかなって思いますね。

都市の研究者が地方を「フィールドワーク」の対象として訪れ、その土地で生きてきた人々の経験を「丸ごと」受け止めることなく、成果物として持ち帰ってしまう。この都市と地方の「非対称性」を問い直し、ローカルに知を還元していくことこそ、翠山大学がやるべきことではないか、という議論が交わされました。

◆「立ち止まる自由」を取り戻す。

常に時間に追われ、答えを出すことを求められる現代。そんな中で、新しい「自由民」のあり方として「立ち止まる自由」というキーワードが浮かび上がりました。

海青子さん： 今はその、なんだろう。お金も少ないし、もう縁も切れてるっていう状態にみんななってきてしまって、（中略）立ち止まれないし、立ち止まることも自由にできないという状態になっちゃったのかなと。

青木さん：自由民っていうとなんかすごいね、行動的な感じするけど、実は自分の意志でね、ある意味で、立ち止まるっていうことももしかしたら自由民の要件、要件かもしれません。

ただ立ち止まるだけでは「自己責任」として片付けられてしまう。だからこそ、地域や人との「縁を結び直す」ことがセーフティネットになり、安心して立ち止まれるのではないか。活動的であることだけが自由なのではなく、自らの意志で歩みを止め、自分や社会と向き合う。そんな時間と場所を翠山大学は提供できるのではないか、という希望が語られました。