職人の技と地域の風土が息づく「福井らしい本堂」

文化財建造物の修理では、単なる「建物の修理」ではなく、地域ごとの気候や風土に根ざした建築の知恵を甦らせることが大きな特徴です。

🪵 雪国・福井の気候に合わせた造り

大安禅寺の本堂は、雪深い福井の気候に合わせた独特の構造をもっています。
正面の広縁（ひろえん）には、風雪を防ぐための仕切り壁が外周を覆い、
その外側には深く張り出したひさし屋根が重なります。
そのため、自然と全体の屋根が大きく、包み込むような姿になっているのです。

屋根は上部が茅葺型の銅板葺き、下屋（ひさし部分）がこけら葺きという珍しい構成。
今回の修理では、この形を創建当初の姿に復原しています。
職人の手によって、伝統的な工法がひとつひとつ丁寧に再現されています。

🪨 福井の名石「笏谷石」が支える寺

さらに注目すべきは、福井の誇る名石――笏谷石（しゃくだにいし）の存在です。
大安禅寺では、この石が礎石・石畳・そして屋根の棟（むね）にまで使われているのです。
特に屋根の棟石（石棟）は非常に珍しく、
「石が屋根を支える文化財」としても貴重な例といえます。

この石は、古くから福井城や北ノ庄城などにも使われた地元の良質な石材で、
時を越えて、いまも寺の基礎を支え続けています。

皆様からのご支援が、このような地域の歴史と職人の技を守る力になっています。
福井の風土が生んだ建築文化の魅力を、ぜひ一緒に未来へと伝えていきましょう。

大安禅寺　髙橋玄峰　合掌