高田歌舞伎を継いだ女役者刊行プロジェクト
高田歌舞伎を継いだ女役者刊行プロジェクト

支援総額

2,069,000

目標金額 1,300,000円

支援者
171人
募集終了日
2021年7月10日

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2021年06月22日 11:00

気仙わたしのふるさと(8)「絶望の中の希望:大震災の体験2」

瓦礫ばかりの街

 津波から逃げ切った後、高台の避難所で家族と合流しました。寒い日でした。時折、雪も降ってきました。避難所でもらった毛布を体に掛け、私たち家族は大勢の避難者と庭から大船渡の街を見下ろしました。
 街は海と化していました。真っ黒な海です。あちこちで家が流されては壊れ、姿を消していきました。
 周りの誰もが無言でした。その思いを代弁するかのように、妻がこう呟いたのです。
 「私たちはこんな罰を受けなければならないような、どんな悪いことをしたの。ただ平凡に、ささやかに生活してきただけなのに……」
 避難所に大勢詰めかけたため、私たちは近くの親戚に身を寄せました。翌朝、被災状況を撮りながら、自宅を見に行きました。木造の建物の多くは跡方もなく消え、大船渡市で一番の中心地域は見渡すかぎり瓦礫ばかり。海から1キロメートルほど離れた所にまで大きな船が何隻も打ち上げられていました。 
 我が家を遠くから眺めると形は残っていました。しかし1階には大穴がいくつも開き、あちこちが潰れていました。その姿を目の当たりにした時、涙も、声も出ませんでした。
 1階は瓦礫で埋め尽くされ、代々守ってきた仏壇もなくなっていました。よじれた階段を上ると2階も津波でかき回され、床に生じた隙間からは階下や道路が見えるほどでした。後日受けた市役所の被災判定は「全壊」でした。
 父が念願をかけて1995(平成7)年、気仙大工に依頼し、6カ月もの期間をかけて建てた家です。棟梁が「百年は大丈夫!」と大小判を捺してくれた家も、たった一度の津波で住めなくなりました。

 

苦難を生き抜く覚悟

 自宅と生活の再建の見通しが立たない中、仮住まいで避難生活を始めました。近くに社長の自宅があったので、数日の休みをもらうため訪ねました。社長は不在でしたが、93歳になる社長のお母さんがいました。気力を失っている私に、こう語りかけてくれたのです。
 「木下さん。私たちが戦争に負けて、満州から引き揚げてきた時はね、国がなかったの。年金も、食糧もなかったの。でも、こうして生きてきました。私はどんな苦難が襲ってきても、その時の経験があるから乗り越えていけます。
 木下さん。悪いことが起きたらね。悪いことは、次に来る良いことの前兆だと思いなさい。そう思えば、どんなことでも乗り越えていけるから」
 満州から幼い子供たちを連れ、飢えに苦しみながら、ようやくの思いで引き揚げてきた方でした。途中で子供を亡くしてもいます。戦後の生活は私たちの想像を絶するものがあったはずです。そうした苦難を生き抜いてきた方の言葉です。挫けそうになった時、この言葉が支えとなりました。

 

取り壊されて玄関だけとなった我が家(2011年5月頃)
見渡すかぎり瓦礫で覆われた市中。震災翌日に写す

 

リターン

2,000


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お気持ちコース

■サンクスレター

■本1冊お届けします

申込数
43
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2021年9月

3,000


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本と名入れのコース

■サンクスレター

■本1冊お届けします

■名入れ:本の巻末に支援者としてお名前を入れさせていただきます(お申し込みの際に名入れの「有無」を選んでいただきます)

申込数
36
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2021年9月

2,000


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お気持ちコース

■サンクスレター

■本1冊お届けします

申込数
43
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2021年9月

3,000


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本と名入れのコース

■サンクスレター

■本1冊お届けします

■名入れ:本の巻末に支援者としてお名前を入れさせていただきます(お申し込みの際に名入れの「有無」を選んでいただきます)

申込数
36
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2021年9月
1 ~ 1/ 9


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