学美応援#19 「鳥取大学准教授　故仲野誠先生」

12月23日に学美・出雲展が無事終了しました。とてもよい美術展でした。来場してくださったみなさま、本当にありがとうございました。遠くから応援してくださったみなさまにも心から感謝いたします。

出雲展には全国から朝鮮学校の美術の先生方が11名と神戸朝高の学生さんも駆けつけてくださいました。それによって出雲展がより豊かで、深みのある美術展になりました。先生方が会場で語られる言葉によって作品向こう側にある子どもたちの姿がみえてくるようでした。お忙しい時期に出雲まで来てくださり、本当にありがとうございました。

出雲展は（いったん）終了しましたが、私の中で出雲展が全く終わらなくて困っています。今日から出張でインドネシアに滞在していますが、まだ出雲展のなかにいる感覚です。学美に出会って約5年、さらに学美に驚き続けています。

子どもの力に徹底的に信をおくこと、あるいは子どもの表現を無条件に、全面的に祝福することがこの学美コミュニティの特徴のひとつだと私は思っています。出雲展で気づいたのは、子どもたちの目に映っている世界を懸命に理解しようと試みつづけて悩み、真剣に揺れ続ける先生方の姿です。

その姿勢は自分の世界観を保ったまま「子どもたちに寄り添う」などというようなある種の「ごまかし」とはまったく異なるようです。学美の先生方が身体化しているのは、自分に見えている世界を反故にし、子どもの目に映る世界を懸命に見ようとする姿勢のようです。自分にはそのような世界の見方はもはやできないことを明確に自覚したうえで、にもかかわらず、子どもたちに感謝しながら、子どもたちに彼/彼女らの目に映る世界を教えてもらおうと（平気で）懸命になっている先生方が私たちの隣にいらっしゃいます。子どもの表現にまっすぐに感動する力や、子どもの表現に敬意を払って無条件で肯定する力に囲まれて、子どもが伸び伸びと育っていく様を突き付けられた感じがします。

それはとても簡単なようですが、（とくに「先生」や「大人」と呼ばれる人にとっては）極めて難しい時代に私たちは生きているように思います。「先生」は、あるいは「大人」は、自分が体得させられた思考の枠組みによってのみ子どもたちを「指導」し、（自分自身がそうであった／そうであるように）子どもたちを委縮させ続けてきたのではないか。多くの子どもたちにとって学校はあらゆることが嫌いになってく場になってはいないか。

権威をもつ他人の価値を生きることが人の生き方だと思い込み、気づいたら自分が自分でなくなり、自分を語ることばや表現方法をちゃんと身につけることができなかったこの時代の「私たち」の姿が学美という鏡に映し出されているように思います。人の身の丈の幸福よりもあらゆる「制度」が過剰に優先される時代のなかで「正しく狂ってきた」私たちにとって学美はどのような存在なのだろうか。

この時代に、子どもの表現を全肯定し、子どもの表現を心から歓ぶ学美のみなさんに出会ったことを心からありがたいと思います。