当事者の言葉Ⅲ「宿題の漢字ドリルは地獄だ」

これは漢字を書くことが苦手な小学4年生のお子さんのお母さまの原体験と思いです。

 

---

 

▼母の手記▼

小学4年生の双子（男女）の母です。息子の書字に違和感を持ったのは4歳ぐらいのとき、その後医療機関で書字障害があると診断をいただいたのは小学3年生のときです。

 

幼稚園のお絵かきの時間に鉛筆やクレヨンをうまく持てず、小さいうちはこんなものかなと気にもしていなかったのですが、小学校に上がり、漢字学習が増えていくにつれ、徐々に違和感を持つようになりました。

 

漢字をなかなか覚えられず、覚えたつもりでも数画足りない、部首や旁の位置がバラバラ、マスを大きくはみ出したりしていました。宿題の漢字ドリルは地獄だと言い、少しの練習でも嫌がります。書き順がバラバラで一画で書ける部分も短い線をいくつもつなげ、棒人間のような字になります。

 

また宿題を終えられず、漢字テストを何度繰り返しても低得点が続き、昼休みを返上して勉強、居残りも続いたため、本人は勉強そのものが嫌になり、自己肯定感も下がりっぱなしでした。

 

頭の回転が良いので詩やことわざを作る時間にはすばらしい作品を仕上げるのですが、どんな立派なものができてもクラスメイトが書く感想のカードはどれも「字が汚くて読めない」「内容は良いけど字が汚い」とありました。内容を褒めてくれる人はいないのか・・・と親として悲しくなりました。

 

 

このままだと本人も私もつらいと思い、近くの児童心療内科に相談し、いろいろな検査やカウンセリングを受けたところ書字障害であるという診断が出ました。

 

状況を学校に報告したものの学校側からは特に何の支援も受けられず、具体的なサポートの提案もありませんでした。待つだけでは始まらないと個人判断でホワイトボードや持ちやすいシャープペンシルなどを使わせ、漢字ドリルの宿題や居残り、昼休みの返上もなしにしてほしいと交渉しましたが、学校側からの返答は「基本そのような特別扱いはできない」というものでした。

 

日本語の不自由な外国籍の子どもには配慮があるのに、我が子の特徴に対して配慮はないのかと憤りを隠せませんでした。

 

最終的な到達点はドリルを終わらすことではなく、漢字を覚え、読み、使えることだと思います。本人や家族、学校がここまで苦労せずとも漢字を覚えるシステムはないものかと日々苦悩していますが、今はインターネットやアプリで様々な情報や支援を受けることができます。

 

漢字学習も同様に本人の辛さを取り除き、効果的に習得できるものがあると良いなと心より希望します。きっと子ども、大人も関係なく役立つと思います。

 

多様性を鑑み、あらゆる選択肢が増えることで人間の可能性は広がります。歴史ある日本の漢字を大切に次世代につなげることが現社会の使命であると思います。