2025年８月９日　第80周忌韓国人原爆犠牲者追慕祭

広島・長崎への原爆投下から80年を迎えた８月、私は韓国慶尚南道陜川（ハプチョン）郡に取材に行きました。

　陜川は釜山の沙上駅にある釜山西部ターミナルからバスで２時間以上かかる緑に包まれた地域です。第二次世界大戦中、多数の住民が広島・長崎に渡って強制労働に従事する過程で原爆に遭遇して命を奪われました。戦後、生存者たちが帰っていった故郷はいつしか「韓国のヒロシマ」と呼ばれるようになり、毎年８月に原爆犠牲者の追悼式が行われます。

　今回初めて参加した私は非核・平和運動にかける韓国のエネルギーに圧倒されました。

　８月５日には「2025陜川非核・平和大会」が陜川文化芸術会館で開催されました。ロビーには原爆被害者たちの作品や写真が展示されています。

会場には被害者や遺族をはじめ全国各地で運動を推進している各界各層の人々が参加しました。それだけではありません。米国、カザフスタン、コンゴ民主共和国、日本、マーシャル諸島、タヒチ、など世界各国からも参加して会場を埋めました。

11時に開会宣言。講演、討論、詩朗読などのプログラムが進行した後、アジア・太平洋地域被爆者証言が行われました。マーシャル諸島、タヒチ、コンゴ民主共和国、日本、カザフスタン、米国、韓国などの人々が映像を交えながらそれぞれの国で原爆によって被った被害の実情を母国語や韓国語で語ると会場の緊張度がひときわ高まりました。

プログラムの最後は演劇でした。広島で被爆した一世と２〜４世が自身の家族史を訪ねていく旅程と非核平和を念願するメッセ―ジを込めた作品に大きな拍手が沸き上がりました。

反核平和の願いを訴えるために、猛暑の夏に10時間におよぶイベントを企画し成功させた人々のエネルギーには感嘆の思いがつのりました。

翌6日には「2025第80周忌韓国人原爆犠牲者追慕祭」が、韓国陜川被爆者福祉会館内にある韓国人被爆者慰霊閣で催されました。被爆死された多数の人たちの位牌が並ぶ慰霊閣前の広場はこの日も全国各地から駆け付けた人々で埋め尽くされました。

配布された小冊子の「第80周忌行事概要」には「核武器使用および核拡散禁止と脱核は平和な世の中を念願する韓国人原爆犠牲者から始まることを広く知らしめ人類平和運動に寄与せんとする」という強い決意が記されています。

韓国原爆被害者協会が主催した式には被爆者や遺族のほか陜川郡主、韓国政府、地元自治体代表、在韓日本大使館公使、支援団体活動家などが挨拶に立った後、厳かな雰囲気の中で犠牲者に対する献花が行われました。

今後、世界の反核平和運動において韓国がより中心的な役割を担っていく決意が参加者一同の胸に染み込んでくる追慕祭でした。