【Yahoo!ニュースに寄せられたご質問へのご説明】
― 国分寺より、正確な事実と経緯のご説明 ―
今回の仏像公開をめぐる件について、KSBの報道記事がYahoo!ニュースに掲載され、コメント欄に多数のご意見・ご質問が寄せられております。
本件は、全国の皆様からのご寄付により成り立った公共的なプロジェクトであるため、当山は主催者として社会に対し説明責任を果たすべき立場にあると考えております。そこで本投稿では、皆さまから多く寄せられた疑問に対し、できるだけ正確かつ丁寧にお答えいたします。
なお、本投稿は、広くご寄付を賜った皆様および社会一般の皆様に対し、本プロジェクトの主宰者として、仏像公開をめぐる経緯について正確な情報をお伝えし、誤解や混乱を避けるための説明責任を果たすことを目的としております。
記載の内容はすべて、当山が保有する記録・証拠・裁判資料に基づいております。
特定の個人を誹謗中傷する意図は一切ございません。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
Q1:そもそも仏像制作の契約はどのような内容でしたか?
A1:
2013年、国分寺と彫刻家 大森暁生氏との間で国分寺で公開するために、制作期間3年・総額3,000万円・等身大の大日如来像を基本とした合意が成立しました。この合意は、国分寺が独自に制作した本件仏像の完成図面・その他仕様書に基づく依頼に対して、彫刻家自身が「自らのキャリアや評価を考えた最高金額」として回答した見積額(彫刻家の希望額)が3,000万円であり、これを国分寺が了承する形で成立しました。
その後、彫刻家は裁判で契約金額の3,000万円について、「仏像について詳しく知らされていない段階で国分寺から一方的に提示された金額である」という主張を行っておりますが、上記のとおり彫刻家からの希望金額であったことが、彫刻家本人の証拠メールとして残っております。
同証拠メール以前の段階ですでに以下の仕様が共通理解として存在していたこともメールその他証拠により裏付けられます:
-
東宝記をもとに国分寺が独自に決定した3大特徴(蓮華座に8頭の獅子・光背に37尊・五仏を十字に配置した宝冠)※これらはすべて国分寺独自の古文書解釈によるもの
-
光背の37尊はレリーフではなく全て立体彫刻(彫刻家との合意成立済み)
-
獅子座は「可能な限り大きく」と国分寺側が要望提出済み
-
完成図面は国分寺が独自に作成したものであり、これを彫刻家に示したうえでその立体化を彫刻家に依頼
-
木像、漆箔仕上げ、本尊は等身大として依頼
これらはすべて、彫刻家が希望金額である3,000万円を提示する前になされた合意内容であり、メール証拠により裏付けられます。
つまり、「仏像について自分が何も知らないまま国分寺が一方的に提示した額」という裁判における彫刻家の主張は、事実と異なるものであることが、証拠から明らかです。
自分に依頼された仕事の内容をろくに知らないままで契約金額に合意する作家がいるでしょうか?
大森暁生氏に依頼するに至った主な理由は、大森氏の彫刻における実務能力、すなわち職人としての技量を一定程度評価したこと、そして彼が提示した3,000万円という見積額に納得したためです。なお、当時、超一流の仏師に同等の仏像制作を依頼した場合の見積額は約4,000万円であったため、コストパフォーマンスの観点からも合理的な選定であると判断しました。
また、人選の一因として、大森氏自身が「著名な仏像研究者・仏師である藪内佐斗司氏の直系の弟子である」と盛んにアピールしていた点も挙げられます。面談時には、藪内氏のアシスタントとして四天王像の制作に携わった経験があることを自ら語っており、これが仏像制作の信頼性を担保するものと受け止めました(もっとも、本像のような本尊級の仏像制作はこれが初めてと伺っております)。
こうした説明に基づき、藪内佐斗司氏の名声や指導実績を背景に、大森氏の能力を信じて依頼を決断したという経緯があります。実際、藪内氏はその後も、大森氏のインスタグラムや著作等にたびたび登場しております。
Q2:契約書はなぜ作成しなかったのですか?
A2:
かなり早い段階で、国分寺から「正式な契約書」の作成を提案しましたが、彫刻家からは「他の仕事でもそういうことはしていない。あとになっていきなり約束と違う金額を言い出すことなどあり得ない。契約書は不要」とのメールでの返答があり、この本人メールが証拠として残るため、双方の信頼に基づいた本件仏像について3,000万円の契約関係が存在していたことは明白です。
Q3:実際にいくら支払ったのですか?未払金はありますか?
A3:
2023年までに国分寺が支払った金額は合計約8,141万円です。
その内訳には以下が含まれます:
-
当初の契約金3,000万円
-
制作期間の延長による彫刻家からの追加請求(増額分)
-
当初「500万円」と彫刻家より説明されていたガラス素材が、最終的に約2,400万円になると言われ、彫刻家が「自腹を切ってでもやりたい」と懇願してきたため、もはや別素材で作りなおす時間がないため、国分寺はやむを得ず了承し、ガラス代全額を負担しました
さらに、彫刻家からは以下のようなメールがあり、すべて証拠として保管されています:
-
「すでに約束を大幅に上回る代金を頂いておりますので、これ以上は結構です」
-
「余った分はお返しします」
-
「(プロジェクト総額1億3,500万円というクラファン本文のチェック依頼に応える形で)自分が1億3,500万円受け取ると思われて税務署に目を付けられたら困るから、1億3,500万円はお堂の改修費用等を含む総額であるということをきちんと表示してほしい」
そして約束の引き渡し日前に、当山は(当然、約束通りの引き渡しを前提に)「もし正当な算出根拠をもとにした未払い代金があるなら、請求通りに支払う」とのメールを送りましたが、これに対して彫刻家からの請求は一切ないまま、引き渡し拒否を一方的に通告してきたという流れです。
つまり、裁判開始以前にすでに彫刻家からのすべての請求に対し、すべて支払っており、未払金は一切存在しません。
Q4:なぜ裁判になったのですか?
A4:
2023年8月、彫刻家がいきなり電話で引き渡し拒否を一方的に通告してきました。そして、過去に自らが不要としていた「契約書を作成してからでなければ仏像は引き渡さない。契約書のひな型は自分が作るから待て」と宣言。その後も今に至るまで、その契約書は案すら提示されておりません。
以上のように、仏像が約束の引き渡し日(8月末)を過ぎても引き渡されなかったため、やむを得ず、当山は東京地裁へ引渡しの仮処分を申し立てました。
Q5:7億円以上の請求というのは本当ですか?
A5:
はい、事実です。
この「7億円超の請求」は、裁判が始まったのちに、裁判進行中において彫刻家が初めて持ち出した主張であり、それ以前には一度も出てきたことのない金額です。
この金額の根拠は、彫刻家と親しい関係にある特定の画廊(新生堂)による鑑定に基づいているというのが先方の主張ですが、本件仏像は当山と彫刻家の二者間契約により制作されたものであり、新生堂は一切関与していない第三者です。そのため、こうした外部による鑑定額は本件契約とは一切関係がなく、金額に正当性はまったく認められません。
さらに、当該鑑定書には「仏像制作のために他の活動が制限された損失も加味している」との記載があります。しかし、鑑定とは本来、作品そのものの価値を中立的・客観的に評価するためのものであり、作家本人のスケジュールや逸失利益を含めて金額を算定するという手法は、鑑定の目的や美術商としての責任から見て、極めて問題があると考えております。
なぜ新生堂がこのような、彫刻家に著しく有利となる恣意的な評価を含んだ鑑定書を作成したのか、当山としては強く疑問を感じており、その説明を求めたいと考えています。
特に、新生堂がこうした手法による鑑定書を作成したことは、当該作家が信義則違反・権利濫用と裁判所に認定されたにもかかわらず、その主張を金額面から裏付けるような形となっており、結果的にその主張を補強する行為と受け取られかねません。
美術鑑定とは、作品の価値を第三者的立場から冷静に評価するものであり、その中立性と倫理性こそが美術商としての根幹をなすはずです。したがって、今回のように、極めて公共性の高い仏像制作プロジェクトにおいて、新生堂が巨額の請求を正当化するかのような内容の鑑定書を提出することは、アート業界の健全性と信頼性を損なう行為であり、新生堂自身の社会的信用を著しく棄損する結果につながることを、当山は強く懸念しています。
そして、実際には、彫刻家本人は同時期に多数の展覧会を開催し、創作活動、著作の執筆・出版などを継続的かつ活発に行っていたことが、展示パネルや公表された著作内の活動履歴から明らかです。
また、本仏像の制作については、私が制作の全期間にわたり工房を頻繁に訪れて確認してきた経緯から判断しても、数百点に及ぶ部品のうち9割以上は若手工房スタッフによって制作されており、大森氏本人が直接彫刻作業を行ったのは、本体および獅子、三十七尊の一部にとどまっています。彩色についても、すべて専門の彩色スタッフが担当しており、大森氏本人は作業していません。
さらに、彫刻家は裁判が始まった後になって「仏像は未完成であるため引き渡せない」との主張を新たに加えましたが、これは引き渡し拒否を通告してきた当初には一切述べられておらず、未完成を引き渡し拒否の理由とする説明は、当山に対しても搬入および組み立てに関わる業者(菅組・成瀬猪熊建築設計事務所)に対しても、なかったことから、引き渡し拒否を正当化するために、裁判開始後に後付けされたものであると言わざるを得ません。
私は本仏像の構成と制作進行を主導監督し、常に進捗を正確に把握してきました。その制作主導者である私が判断するに、引き渡し直前に必要だった作業は、いずれも短期間で完了できるものであり、彫刻家が意図的に作業を停止・遅延させていたと認識せざるを得ません。この点(彫刻家による完成作業の故意による遅延)については、当時の工房スタッフの証言によっても裏付けられております。
Q6:仏像の公開にあたり、著作権の問題はないのですか?
A6:
当山は単独著作物と考えておりますが、仮に著作権が彫刻家側に一部存在していたとしても、本件のように寄付者への公開を前提とした公共的プロジェクトにおいて、著作権を理由に公開を差し止めることは、法律上「権利の濫用」にあたります(著作権法第64条・65条)。
実際に、東京地裁・高松地裁ともにこの点を明確に認定し、「公開を妨げることは信義則違反・権利の濫用である」との判断を示しています。
Q7:彫刻家はなぜ今も説明を出さないのですか?
A7:
私たちとしては、その理由を断定的に述べることはできません。最終的には、彫刻家ご本人にお尋ねいただくしかありませんが、当山が把握している範囲、ならびに報道や公開資料等から客観的に推察される事情としては、以下のような可能性が考えられます:
-
東京地裁および高松地裁のいずれにおいても、彫刻家の主張が退けられたため、説明を行えば過去の言動や主張との矛盾が明らかになるおそれがあること
-
その矛盾がSNS等で注目され、批判や反論が集中するリスクを避けたいと考えている可能性
-
一貫して「法廷外では発言しない」という姿勢を取ることで、説明責任を回避している
いずれにせよ、本件は全国からの寄付によって成り立った、公共性の極めて高い仏像制作プロジェクトであり、その寄付金8141万円を受け取りながら、その公開を妨げている彫刻家にこそ、最も強い社会的説明責任が課されるべきであると、私たちは考えております。
なお、東京高裁に提出された最新の先方主張書面によれば、彫刻家の要求は「7億円を支払うか、仏像を返せ」というものです。すなわち、これが仏像の引き渡し拒否および公開妨害の直接的な動機であることになります。
このような主張に基づき、彫刻家は東京と高松の両地裁でともに「信義則違反・権利の濫用」と認定された公開を妨害するための訴訟を提起しました。その結果、仏像は長期間にわたり一切公開されず、長年にわたってご寄付くださった方々の中には、すでに亡くなられた方、あるいは高齢や障がい等により参拝が不可能となった方もおられます。この事実は、取り返しのつかない深刻な社会的損害であり、これらの被害に対する彫刻家の責任は極めて重大であると私たちは認識しています。
したがって、彫刻家が今後何らかの説明を行う場合には、これまでに本人が当山に送付したメールの内容や、裁判所が証拠に基づいて退けた主張と矛盾しない形でなされるべきです。
もし、そうした証拠や判決に明らかに反する、自己保身を目的とした一方的な説明が公表されるようなことがあれば、当山としては名誉および信頼の保全のため、法的措置を含むしかるべき対応を、いかなるためらいもなく取る覚悟です。
加えて、そうした行為は、これまでの経緯や事実関係の証拠とさらに乖離した説明を重ねることとなり、本人の説明責任を一層厳しく問われる結果となるでしょう。