支援総額
目標金額 10,000,000円
- 支援者
- 269人
- 募集終了日
- 2025年9月18日
曝され、静かに思う(青木海青子)

曝され、静かに思う(青木海青子)
◆ 「サービス」から「おすそわけ」へ:私設図書館の試み
奈良県の東吉野村という人口約1400人の村で、石造の橋を渡り、林を抜けたところで小さな人文系私設図書館ルチャ・リブロを営んでいます。「営んでいる」と言っても「経営」をしている訳ではなく、自分たちの蔵書や生活を開いて「おすそわけ」をしている感覚です。
公立図書館や大学図書館では図書館は通常「サービス」を提供するもので、「サービス」はニーズに合わせてある種果てのないものですが、おすそわけの場合はあくまで生活の余剰分を手渡す行為ですので、分かりやすく限界があります。また、おすそわけをするには、自分たちが何を持っているのかに自覚的でなくてはなりません。
サービスに奔走している際には、自分自身の疑問や問題意識を消せるほどに他者のニーズに応えられる、良い伴走ができるという気がしていましたが、(もちろんサービスというものが社会の中でとても大切な役割を担っているとは考えていますが、)おすそわけに移行するためには、自分自身がこの社会の抱える問題の当事者であるということと向き合わない訳にはいかなくなりました。

◆ シナリオの書き換え:「伴走者」から「当事者」へ
大学図書館勤務を経て、私設図書館を開いて来年で10年となりますが、果てのない「サービス」から有限の「おすそわけ」、自分を消して誰かの問題意識に寄り添う「伴走者」から、自身も問題を抱えた**「当事者」へと自らのシナリオを書き換える**ことが出来たのは、ごく最近のことであるように思います。
堀田新五郎先生が社会の現状に関して、「個人レベルでも社会レベルでも、『生活習慣病』を患っている」と書いておられましたが、その表現がぴったりです。自分の当事者性を置き去りにして果てのないサービスの渦に巻き込まれていく、という在り方は、社会からの要請に応えた結果でもあり、私自身も過剰に内面化して、思考や生活にまで習慣として染み付いてしまったものでもありました。
漠然と、「このシナリオでは私は生きていけない、このシナリオに添うと、心身が壊れ続けてしまう」とは感じているものの、どこをどう書き換えたらいいのか分からず、もがいては倒れを繰り返し、時にはシナリオそのものを引き裂こうとしているような日々でした。
◆「曝書(ばくしょ)」がもたらした変化
ではそのような湿気の重みが染みついたシナリオが、どうやって変化したのでしょう。そんなことに思いを馳せる時、私の脳裏には「曝書」という言葉がふと浮かびます。元々は、書物を日の光や風に当てて虫干しすることを指した言葉です。現在では紙の製法や材質、印刷の方法、また図書の保存環境も昔とは異なりますので、図書館で実際に曝書をすることはありませんが、「○月○日までは曝書休館です」といった風に、言葉としてはところどころに残っています。
大学図書館で働いている時から、この「曝書」や「曝書休館」という言葉が何故だか好きでした。光や風に曝す。曝すことによって変化する。時間がかかるけど、それしかない。静思して待つのだ。そんな情景が浮かんでいたのかもしれません。
私のシナリオは何か一つの劇的な出来事や出会いによってガラッと一変した訳ではなく、この「曝書」のような形で、少しずつ軽やかさを取り戻していったような気がします。東吉野の緑に包まれて、光や風にただ曝される。ルチャ・リブロを訪れる方々の豊かで多様な生き方に触れ、曝されて、ズッシリと染みついたものが解き放たれていく。こういう変化が時間をかけて自らの内に起こっていたのだと思います。
◆ 翠山大学との共鳴:曝書の時空と「退修会」
私がそんな時間を過ごしている間に立ち上がってきた翠山大学(これが同時期であることは偶然ではないような気がします)は、個々人の生活習慣病だと思っていた問題を社会全体の生活習慣病として掬い上げ、曝書の時空を一緒に持とうとするような試みだと感じています。
翠山大学の前身となった「撤退」の考え方を多角的に取り扱った一冊『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』(晶文社)で内田樹先生が書かれていた言葉がふと浮かびます。
「リトリート」という言葉を僕は大学在職中に時々耳にしました。それは「退修会」と訳されていました。たしかに英和辞典でretreatを引くと、「静養」や「静思」という訳語がみつかります。日常から離れ、落ち着いた環境の中で、霊的な養いの時を持つことだそうです(知らなかった)。僕のいたミッションスクールでは全教職員が集まり、チャプレンの祈りの後に分科会にわかれて、一日かけて「私たちの大学は何のために存在するのか?」という建学の理念を検証するのが「退修会」でした。
この本で僕たちはこれから「撤退」についてさまざまな論点を提出します。そして、僕からのささやかな願いは、その作業そのものを「静思」として営めたらいいということです。
つまり、「僕たちの暮らすこの共同体は何のために存在するのか?」という根源的な問いをめぐる思索は、あまり論争的になったり、声を荒立てたりすることなしに、できれば「静思」という仕方で行う方がいいと思うのです。難しいとは思いますが。(p.14)
曝書の時空と「退修会」の景色には、どこか重なるところがある気がします。
分散・多元の学び方・働き方・生き方を提示する翠山大学は、全国各地に教育研究の拠点を持ち、学生がそこに出かけて行き、滞在して学ぶことができるという特徴を持っています。これはまさに、その土地の風や光に曝され、静思する時間となるのではないでしょうか。
私自身は「このままで、いいのか?」と感じつつも、いつのまにか自分にへばりついていたシナリオのどこを書き換えたらいいのか分からず、もがいては倒れを繰り返していました。結果的に疲れきっていつのまにか日光や風雨に曝されて解け、重さが抜けたようなところがありますが、翠山大学には日の光や風の中、一緒に座る仲間や先人がいます。こんな心丈夫といったらありません。
漠然と、「このシナリオでは私は生きていけない、このシナリオに添うと、心身が壊れ続けてしまう」と感じている方、少しだけ、一緒にここに座ってみませんか。
曝され、静思することの力を、翠山大学で感じてもらえたらと思います。
引き続き活動報告ではラジオ配信のレポートをはじめ、プロジェクトの進捗状況などを発信してまいります。応援のほどよろしくお願い申し上げます。
リターン
15,000円+システム利用料

おすすめ|限定ZINE「私たちはシナリオを書き換えられるのか?(タイトル仮)」
参画メンバーによる、ここでしか手に入らないオリジナルZINEです!
多彩なメンバーが「私たちはシナリオを書き換えられるのか?」をテーマに、コラム、エッセイ、写真、イラストなどを寄せて、オリジナルのデザインで制作し、送付いたします。
【寄稿者】内田樹、広井良典、前野隆司、堀田新五郎、渡邊格・麻里子、勅使川原麻衣、水谷知生、作野広和、坂本大祐、岡田勝太、西尾美也、青木真兵、青木海青子、光嶋裕介、阿野晃秀、石島知、林尚之、松岡慧祐、梅田直美、遠又香、安井早紀ほか
※デザイン・仕様等はイメージになります。
【共通リターン】
◯お礼のメッセージ
◯開学メンバーとしてWEBサイトにお名前掲載
◯クラファン終了報告会にオンラインご招待
※10月開催予定、詳細は9月までにご連絡いたします。
- 申込数
- 90
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2026年1月
5,000円+システム利用料
シンプルコース|5,000円
【共通リターン】
◯お礼のメッセージ
◯開学メンバーとしてWEBサイトにお名前掲載
◯クラファン終了報告会にオンラインご招待
※10月開催予定、詳細は9月までにご連絡いたします。
- 申込数
- 37
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2025年10月
15,000円+システム利用料

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※デザイン・仕様等はイメージになります。
【共通リターン】
◯お礼のメッセージ
◯開学メンバーとしてWEBサイトにお名前掲載
◯クラファン終了報告会にオンラインご招待
※10月開催予定、詳細は9月までにご連絡いたします。
- 申込数
- 90
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2026年1月
5,000円+システム利用料
シンプルコース|5,000円
【共通リターン】
◯お礼のメッセージ
◯開学メンバーとしてWEBサイトにお名前掲載
◯クラファン終了報告会にオンラインご招待
※10月開催予定、詳細は9月までにご連絡いたします。
- 申込数
- 37
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2025年10月

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