「アカデミックSNS」でできること

　今回のプロジェクトでめざしているアカデミックSNSが現行のサイトと最も異なる点は、研究者の方やこれまで読者だった方々に参加していただけるようになるということです。「トイビト」を、学問を通じた出会いの場として使えるようになる、と言ってもいいかもしれません。

　研究者の方であれば、ご自身の研究に関するコラムやエッセイ、ゼミの活動レポートなどを投稿することで、学び直したいと思っている社会人やリタイア層はもとより、全国の大学院生や大学生、さらには大学で何を学ぼうかと考えている高校生にまで、広く研究を知ってもらうことができます。

　一方、学問に関心のある一般市民の方は、研究者のそうした記事から気になった箇所を抜粋し、気づきや学び、疑問点などを書き入れたオリジナルノートを作成して、任意で公開することができます。ノートは、哲学、社会学、人類学といった学問分類ごとに作成してもいいでしょうし、ある概念（たとえば「人間」や「世界」など）をキーワードにして、分野を問わずにまとめていくやり方も考えられます。

　こうして作成・公開されたノートは、自分ひとりの記録にとどまらず、他のユーザーにとっても新たな気づきや学び、研究記事を発見するきっかけとなるでしょう。つまり、研究者や運営サイドが投稿する記事だけでなく、このノートもそれぞれ作品であり、トイビトのコンテンツとなっていくのです。

　よく、ある物事を理解するのにいちばんいい方法は、それを他人に教えることだと言われます。研究してきたことや学んだこと、そこから出てきた新たな問いを、他の人にもわかるようにまとめて投稿し、みんなで共有する。このプロジェクトを通して、そんな新しい学問の場を実現したいと考えています。